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Credit: canva
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キリンの「脚の長さ」には命に関わるメリットがあった

2025.11.10 17:00:24 Monday

アフリカのサバンナに悠然と立つキリン。

その最大の特徴といえば、遠くからでも一目でわかる「長い首」ですが、実はもう一つ、見逃せない進化の工夫があります。

それが「脚の長さ」です。

キリンの脚は、地上からほぼ2メートルの高さに心臓がくるほど長く伸びています。

実はこの「長い脚」こそが、キリンが生き延びるために不可欠な、命を支える“省エネ装置”になっていることが、豪アデレード大学(University of Adelaide)の最新研究で明らかになりました。

なぜ脚の長さが「命に直結」するのでしょうか?

研究の詳細は2025年10月20日付で科学雑誌『Journal of Experimental Biology』に掲載されています。

The Surprising Reason Why Giraffes Have Such Very Long Legs https://www.sciencealert.com/the-surprising-reason-why-giraffes-have-such-very-long-legs
How long limbs reduce the energetic burden on the heart of the giraffe https://doi.org/10.1242/jeb.251092

首が長いだけでは生きていけない? キリンの“心臓過労”問題

キリンはなぜ、あれほど長い首を持つのでしょうか。

その理由はシンプルで、アカシアの木など高い場所の葉を独占できるからです。

他の動物たちが手を伸ばせない高さに生える栄養豊富な若葉を、一年中食べることができるキリンは、餌の競争からも干ばつからも比較的自由です。

しかし、首が長いことには「致命的なデメリット」も存在します。

それは重力に逆らって高い位置にある頭まで血液を送り届けるため、心臓が常に超高血圧で働き続けなければならないという点です。

成獣のキリンの心臓は、平均で200~250mmHgという異常な高血圧を維持しています。

これは私たち人間の2倍以上の血圧であり、同じ体重の他の哺乳類と比べても群を抜いています。

このため、キリンの心臓(左心室)は、安静時にも全身で消費するエネルギーの約16%を一手に引き受けています。

人間の場合、心臓の消費エネルギーは全体の6~7%程度に過ぎません。

さらに、もしキリンが「首だけ長くて脚は普通」だった場合、心臓の負担はさらに増加します。

それを踏まえて、研究チームは最新のシミュレーションで、架空の“エラフ”(首はキリン、脚はウシ科エランドという組み合わせ)という動物をモデル化したところ、心臓のエネルギー負担が全身の21%にも達しました。

つまり、キリンの血圧は今でも高いのですが、脚の長さがふつう以下だと、とても生きてはいけない状態になると考えられるのです。

このような動物は、摂取する食物の大部分を心臓を動かすだけに費やしてしまい、過酷なサバンナでは生き残れなかった可能性が高いといえます。

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