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Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部
biology

老化細胞を除去する「免疫細胞」を発見

2025.11.20 18:00:45 Thursday

私たちの体は年齢を重ねるほど、細胞の劣化を修復しづらくなり、炎症や臓器の機能低下が蓄積していきます。

その中心にいるのが、いわゆる「老化細胞」です。

この細胞は分裂を停止して新しく生まれ変わらない一方、周囲に炎症性物質を撒き散らし、臓器に慢性的なダメージを与え続けます。

この“ゾンビ化した細胞”をどう取り除くかは、老化研究の最重要課題のひとつでした。

そんな中、イスラエルのネゲヴ・ベン=グリオン大学(BGUN)の研究チームが、老化細胞を“狙って除去する”免疫細胞を特定したと報告しました。

その正体は「CD4-Eomes細胞」と呼ばれる特殊なヘルパーT細胞(免疫細胞の一種)です。

研究の詳細は2025年10月7日付で科学雑誌『Nature Aging』に掲載されています。

Scientists Have Discovered a Special Type of Immune Cell That Slows Aging https://www.sciencealert.com/scientists-have-discovered-a-special-type-of-immune-cell-that-slows-aging BGU scientists one step closer to understanding aging https://www.bgu.ac.il/en/news-and-articles/bgu-scientists-one-step-closer-to-understanding-aging/
CD4 T cells acquire Eomesodermin to modulate cellular senescence and aging https://doi.org/10.1038/s43587-025-00953-8

体内で「老化細胞ハンター」に変身するT細胞の正体

研究チームが着目したのは、免疫の司令塔である「CD4 T細胞」です。

通常、CD4 T細胞は病原体への免疫反応を調整する役割を担います。

しかし、研究により驚くべき事実が判明しました。

加齢によって老化細胞が蓄積すると、その存在を察知したCD4 T細胞は“別の姿”へと変化し始めるのです。

これが、Eomesというタンパク質を発現する「CD4-Eomes細胞」です。

この細胞はこれまで存在自体は知られていましたが、今回の研究により「老化細胞が増えるほど、CD4-Eomes細胞が誘導される」という分子的な仕組みが初めて明確になりました。

研究者は、老化マウスの免疫細胞を詳しく比較し、次のような発見へとたどり着きました。

●老化細胞があるとCD4-Eomesが増える

老化細胞が多い環境では、CD4 T細胞がEomesを発現し、“老化細胞ハンター”に変化するよう誘導されることが判明しました。

●CD4-Eomesを除くと老化が加速

遺伝子操作によってCD4-Eomes細胞を作れないマウスにすると、老化細胞が急増し、身体機能の低下や寿命の短縮が起こったのです。

つまり、CD4-Eomes細胞は身体に蓄積した老化細胞を抑え込み、私たちの老化速度を制御する免疫細胞だったということです。

さらに肝硬変モデルのマウス実験では、CD4-Eomes細胞が存在すると炎症や線維化が抑えられ、組織の損傷が軽減されました。

次ページ加齢とともに「むしろ増える」免疫細胞

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