「科学者が嫌い」な人は生存率まで下がる
STEP1:科学者と一般人の属性を比較
まず研究チームは、アメリカ社会全体と、科学者集団の属性を大規模データで比較しました。
その結果、科学者は一般人口と比べて、男性、白人、都市部出身、高学歴家庭出身、非宗教的な人が著しく多いことが確認されました。
たとえばノーベル賞受賞者の構成を見ると、男性が占めており、白人が大多数です。現代の科学者全体でも傾向はやや緩和されているものの、依然として、女性、黒人やヒスパニック、農村部出身者、宗教的な人、社会経済的に不利な背景を持つ人は少数派です。
つまり科学者という「知識がある人の集まり」は、社会的・文化的にかなり偏った集団になっているのです。
では、この偏りは、科学者への信頼と実際関連しているのでしょうか。
STEP2:『科学者に対して感じる心理的距離』が、信頼と行動を左右していた
まず研究チームは、科学者と一般社会との人口構成のずれが、実際に科学者への不信につながっているのかを検証しました。
そのために用いられたのが、1970年代から半世紀以上にわたって継続されてきた全国規模の社会調査データです。
このデータには科学者への信頼(科学者・研究者は正しい対応をすると思うか)に関する調査も含まれていました。
このデータを分析すると、女性、黒人、農村部居住者、宗教的な人、低学歴・低所得層といった、科学者の世界では少数派になりやすい属性の人ほど、科学者を信頼しにくいという傾向が、一貫して確認されました。
重要なのは、この傾向が一時的なものではなく、半世紀以上ほとんど変化せずに維持されていた点です。
つまり科学者への不信は、最近のSNSや政治対立によって生まれたものではなく、社会の中に長く埋め込まれてきた構造的な特徴だと考えられます。
この信頼の差は、個人レベルだけでなく、州ごとにもはっきりとした傾向として現れていました。
州によって、農村部居住者が多いか、学歴や所得の分布がどうなっているか、宗教的な人がどれくらいいるかといった人口構成は大きく異なります。
その結果、「科学者を信頼しやすい属性の人が多い州」と「信頼しにくい属性の人が多い州」が、長年にわたって分かれていたのです。
そして研究チームは、この長期的に固定された信頼の差が、コロナパンデミックという非常事態でどのような結果をもたらしたのかを検証しました。
その結果、2020年時点で科学者を強く信頼していた人ほど、翌年にワクチンを接種している確率が高いことが分かりました。この影響は、当時大きく注目されていた政治的立場よりも大きく、科学者への信頼そのものが行動を左右していたことを示しています。
さらに州レベルで見ると、半世紀以上にわたって科学者への信頼が低くなりやすかった州ほど、ワクチン接種率が低く、結果としてCOVID-19による死亡率が高いという関係まで確認されたのです。
これは、パンデミック時の混乱やSNS上の誤情報だけでは説明できません。科学者への信頼の差は、危機が起きるずっと以前から社会の中に組み込まれており、その「構造」が、非常事態において実際の生死を分ける行動の差にまで現れていることをこの研究は示しています。
STEP3:「自分と似た科学者」は、本当に信頼されるのか
最後に研究チームは、「科学者の属性を自分に近づけると科学不信は解消されるのか」という疑問を、実験で検証しました。
参加者には、経歴や背景が異なる2人の架空の科学者が提示され、ワクチンを打つべきかの助言(または主治医として選ぶ医師)について、どちらを選ぶかを回答しました。
科学者のプロフィールには、性別、人種、宗教性、育った地域、社会階層、学歴、研究経験といった要素が組み合わされていました。
その結果、最も重視されたのは研究経験でしたが、それに加えて、自分と属性が重なる科学者は選ばれやすい傾向がありました。
特に顕著だったのは、女性、黒人やヒスパニック、農村部出身者、低い社会階層出身者など、科学界では少数派の属性を持つ人ほど、属性の一致を重視するという点です。
さらに興味深いのは、実在しない架空の科学者であっても、実験の中で「自分と似た属性の科学者」が繰り返し示されたことで、参加者の「科学者という集団そのもの」に対する信頼が実験後に上昇したということです。
これは、科学者の中に「自分と同じ背景を持つ人が存在する」と認識するだけで、科学者という集団そのものへの心理的に距離が縮まり、結果として信頼が高まることを示しています。
心理学が示す「距離と信頼」の関係
この研究が示したのは、「科学を信じない人がいる理由」は、知識や理性の欠如では説明できないという事実です。
多くの場合、その正体は「自分とはあまりにも違う人たちが語っている世界だ」という感覚、つまり科学者という集団への心理的な距離感や違和感なのです。
人が似ている相手を信頼しやすいという傾向は、社会心理学では古くから知られています。これは「主要価値類似性モデル」と呼ばれ、性別や出身地、生活経験などの共通点は、「この人は自分のことを分かってくれそうだ」という感覚を生みやすく、それが信頼につながることがあります。
また、身近に科学者がいるかどうか、たとえば家族や友人に科学者がいるかといった“つながりの近さ”も重要です。
遠い存在に感じる人より、接点がある人の方が話を受け入れやすくなります。これは情報の正確さとは独立した心理的な効果で、すべての情報を自力で判断できない現代社会では合理的な近道と言えます。
たとえば、子どもは大人である親や教師よりも、同年代の友達の言葉を優先してしまうことがありますが、これはこの理論のわかりやすい事例です。「自分のことを分かってくれる」という感覚は、「情報の確かさ」そのものとは別の角度から信頼を左右します。
そのため、研究の報告が報道された際に、女性研究者であるとか、研究者が貧困家庭で育った、などのプロフィールを紹介する必要があるのか、と疑問を感じる人もいるでしょうが、科学界の多様性が可視化されることには、倫理的な正しさ、研究の質を示すのと同じくらいに重要な意味があると考えられます。
また科学の不信の背景には、「なんとなく気が合わない」という感覚だけでなく、過去には、ある集団が研究で不当な扱いを受けたり、逆に研究の対象から外されて必要なデータが不足したりして、「科学が自分たちを十分に扱ってこなかった」という経験の積み重ねも存在していると、論文では指摘されています。
確かに歴史上では、科学者のモラル意識が低かった時代もありました。そうした点が、現在もなお科学の信頼に影響を与えている可能性はあるでしょう。
今回の研究が示したのは、「科学が何を語るか」という問題だけでなく、「科学をより身近に感じさせる工夫」が、情報を伝えるためには重要という事実なのです。


























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