なぜ葉緑体は消えない?なぜオスがいらない?

一般に植物といえば、緑の葉で光合成を行い、花粉を飛ばして種子を作る姿を思い浮かべるでしょう。
しかし日本や台湾の山奥や沖縄の森では、一見キノコのようにも見える不思議な植物がひっそりと生えています。
それが「ツチトリモチ」と呼ばれる寄生植物です。
葉はなく、地中では宿主の根に寄生して生きます。
葉緑体自体は辛うじてという感じで存在しますが、光合成のための緑色の色素を持たないため光合成はできず、栄養や水は基本的に宿主に頼っています。
その代わりに特定の樹木の根にとり付いて養分を横取りするという、極端な生き方をしています。
さらに驚くべきことに、ツチトリモチ属の中には受精なしで種子を作る種類や集団も知られています。
コラム:植物にも性別はあるの?
私たち人間は、自分の性別を常に意識していますが、普段目にする植物にも「性別」が存在することをご存知でしょうか。植物の性別は、実は意外なほど多様で複雑です。最も良く知られているのは桜やチューリップ、アサガオなど、ひとつの花の中に「雄しべ」と「雌しべ」の両方を備えたタイプです。しかし植物には他にも「雄株」と「雌株」が個体レベルで完全に分かれているものも存在します。イチョウなどが代表的で、オスの木には花粉を作る雄花が咲き、メスの木には種子を作る雌花が咲きます。そのため、実をつけたいなら必ず両方の株を植える必要があります。また、ひとつの植物の中に雄花と雌花が別々に咲くタイプもあります。身近な例ではトウモロコシやカボチャがそうです。トウモロコシでは植物の先端に雄花が咲き、茎の途中に雌花が現れ、それぞれが役割を分担して種子を作ります。そして、植物の“性”にはもう一つの顔があります。それは、性を使わない増え方です。挿し木や地下茎(ちかけい:地面の下で伸びる茎)のような「体をコピーして増える」方法もあれば、もっと極端に、受精なしで種子を作る無融合種子形成(agamospermy:受精なしで種ができる)という技まであります。ここまで来ると、性は“必須の儀式”ではなく、「状況に応じて使い分けるオプション」に見えてきます。実際今回のツチトリモチ属の研究でも、オスを必要としない“メスだけで種子を作る”繁殖が調べられています。
オス(花粉など)を全く必要としない無融合種子形成(受精なしで種子を作るしくみ)という現象で、植物界では極めて珍しい繁殖様式です。
ツチトリモチ属は、その風変わりな生態から長らく生物学者を悩ませてきました。
特に大きな謎は2つあります。
1つ目は「なぜ光合成をしないのに葉緑体が残っているのか?」という点です。
ツチトリモチ属の葉緑体ゲノム(葉緑体内のDNA)は、従来の植物に比べて10分の1程度の極小サイズしかなく、光合成に関する遺伝子がごっそり失われていることが以前から指摘されていました。
それでも葉緑体そのものは細胞内に残存していたのです。
※ミニ解説:葉緑体もミトコンドリアと同じようにかつては独立した生命であったと考えられており、内部には独自のDNAを今でも持っていることが知られています。
もう1つの謎は「オスなしで種子を作る仕組みは、いつ・どのように進化したのか?」です。
実際、ツチトリモチ属の中にはメス株しか発見されていない集団(例:ヤクシマツチトリモチの日本・台湾の集団など)があり、かねてからそれらは雌雄分離(雌雄が別株)のはずなのにオス株が見つからず、単為生殖(メスだけで繁殖)していると考えられてきました。
しかし無融合種子形成は遺伝的多様性の欠如や有害な変異の蓄積といった問題から長期的維持が難しく、通常は一時的な“裏技”的戦略に留まることが多いと考えられています。
果たしてツチトリモチ属はどのようにしてこの禁断ともいえる繁殖戦略を手に入れたのでしょうか?
これらの謎を解明すべく、研究チームは日本と台湾にまたがるツチトリモチ属の大規模調査に乗り出しました。



























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