・私たちの「主観的な時間」の感覚に強く関わる脳の領域が発見される
・「空間認識」と異なり、脳内での「時間」の処理は、より複雑な信号の解読が必要となる
・この発見の意義は大きく、この分野の研究がこれから盛んになると考えられる
ノルウェーのカブリ研究所の研究者たちが、「時間感覚」を体験する際に働く脳細胞ネットワークを発見しました。その領域は「内嗅皮質側部(lateral entorhinal cortex:LEC)」と呼ばれ、「空間」を処理する領域の真隣に位置しています。
https://www.nature.com/articles/s41586-018-0459-6
私たちは時間を確認する際、「時計の時間」を見て行動をコントロールしていますが、脳内が必ずしも時計の進みと同じような時間感覚を体験しているわけではありません。今回の研究で発見されたのは、そんな私たちの「体感」する時間を司る「神経時計」の存在です。
神経時計は、私たちの「体験」を整理することによって、脳に「主観的」な時間を感じさせています。このネットワークが直接時間感覚を変換しているかどうかはわかっていませんが、もしそうであれば、その信号は「体験」を「固有の記憶」として保存するために変化していることが考えられます。
「空間」認識の際に、脳が一つの格子細胞からの信号を解読すればいいのに対し、「時間」の処理はさらに複雑なタスクとなります。研究者らは、数百の細胞の活動を観察することで、脳が時間処理の信号を解読していることを確認しました。
ノーベル賞の受賞経験のある、研究を率いたエドバルド・モーセル教授は、「今回、私たちが経験する『時間』と強く関わる脳の領域を発見することができました。これにより、まったく新しい研究分野が誕生することでしょう」と述べ、研究の意義の大きさを語ります。
楽しい時間は早く過ぎる。このような「主観的」な時間と「客観的」な時間の違いは誰もが経験するものです。特に「時間と空間」は、哲学と物理学の間では長く議論が交わされているテーマ。人間が知覚する「時間」と「記憶」、そして空間との関連性が明らかになれば、研究分野をまたがった新しい知見が得られることでしょう。
via: neurosciencenews / translated & text by なかしー