他人のたてる音が許せない!
ネットでは汚らしい咀嚼音を立てて食事する人のことを「クチャラー」と呼び、非難する声をよく見かけます。
クチャラーは基本的に、育ちが悪くきちんと躾けられていないため、マナーがなっていないのだ、といわれています。
こうした議論をしている掲示板では、「クチャラーは死刑にしろ!」などと、過激な書き込みをする人もいて、極端に憎悪されている様子が見受けられるんです。
しかし、漫画やドラマなどでは不快感を煽る目的で、クチャラーが描かれることはありますが、日常でそこまで嫌悪するようなクチャラーに遭遇することがあるでしょうか?
実は多くの人たちは、こうしたクチャラーの存在に、あまりピンときていない可能性があります。
それは多くの人たちが、運良くひどいクチャラーに出遭っていないだけという意味ではありません。
他人をクチャラーと認識してしまう人の方に、原因が潜んでいる可能性があるのです。
その原因と考えられているのが、ミソフォ二ア(音嫌悪症または音恐怖症)と呼ばれる症状です。
この症状の人は、他人の発する特定の音(「トリガー音」と呼ばれる)に対して、激しい不快感や嫌悪感を示します。
トリガーとなる音は、人の咀嚼、呼吸、嚥下などで、基本的に口や喉、顔の動きに関連して発せられる音が対象です。
その反応はしばしば極端で、制御できない怒りや嫌悪、闘争・逃走反応を引き起こします。
闘争・逃走反応とは、差し迫った脅威に対して動物が起こす急性ストレス反応の1種です。
この場合は、音を出している人を殴りつけたいとか、その場から立ち去りたいという強い衝動を意味します。
ミソフォ二アの人がどれくらい存在するのか、正確な数は不明です。
しかし、いくつかの調査研究では、一般的な人々の6%から20%に見られると報告されていて、それほど珍しい症状というわけではなさそうです。
ただ、重症になると、家庭や職場・公共の場など社会にうまく適応できなくなるケースがあるといわれています。
そのため、ミソフォ二アを精神障害に分類するべきだという意見もあります。
しかし、ミソフォ二アについては、研究数は増加傾向にあるものの、まだその症状のメカニズムは明確でなく、治療法も完全に確立されていないため、病気としての定義は曖昧です。
そして今回の研究は、そんなミソフォ二アの脳内で起きる特殊な反応について明らかにしたのです。