「PTSDになる人」と「ならない人」の違いを探る

心的外傷後ストレス障害(PTSD:Post Traumatic Stress Disorder)は、トラウマとなるような圧倒的な体験をした人が、その後で抱える精神疾患です。
例えば、地震、洪水、火事、病気、交通事故、戦争、虐待、暴行などを経験した人は、後の人生でその経験によって苦しめられることがあります。
PTSD患者は、生活を送る中で急に当時の記憶がフラッシュバックしたり、不安や緊張が高まったりします。
また感情が麻痺したように興味や関心が乏しくなり、疎外感や孤立感に苛まれます。
さらに睡眠障害や集中困難、ちょっとしたことでイライラしたりビクビクしたりするケースもあるようです。
しかし、トラウマ体験をした人でPTSDを発症するのは、わずか25~35%です。
そのため、PTSD患者を効果的に治療するためには、「なぜ一部の人たちがPTSDを発症し、他の人たちは発症しないのか」という点を理解する必要があります。
これまでの研究によって、ストレス時に血流に放出されるステロイドホルモン「糖質コルチコイド」のレベルの低下とPTSDの関連性が示唆されてきました。

この糖質コルチコイドは副腎で生成されるホルモンであり、ストレスに応答して分泌され、ストレスに適応するための様々な生体反応を引き起こすことで知られています。
そして糖質コルチコイドには、コルチゾールやコルチコステロンなどが含まれます。
サンディ氏によると、「糖質コルチコイドのレベルはかなりの個人差があり、特にトラウマ体験をしたPTSD患者では、糖質コルチコイドレベルの低下がよく観察されている」ようです。
では、糖質コルチコイドレベルの低下がPTSDを引き起こすのでしょうか?
その可能性はありますが、因果関係を証明することは簡単ではありません。
PTSD患者の、トラウマ体験以前の糖質コルチコイドレベルを測ることはできませんし、糖質コルチコイドレベルが低い人間に恐怖体験を与えてPTSDになるか調べるわけにもいかないからです。
そこでサンディ氏ら研究チームは、糖質コルチコイドレベルが低い人間を模倣したラットで因果関係を確かめることにしました。



























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