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出産の数年後にADHD診断される母親が急増している (2/2)

2026.01.18 12:00:01 Sunday

前ページ女性に多い「隠れたADHD」

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なぜ「産後4〜5年」が限界のサインなのか?

この時期に診断が増える背景として、子供の成長に伴って母親に求められる能力が、単なる「体力」から、より高度で複雑な「脳の働き」へとシフトしていくことが関係している可能性があります。

特に幼児期以降、母親は性質の異なる二つの大きな壁に直面します。

一つ目は、「安全管理のための持続的な注意力」です。

乳児期とは異なり、活発に動き回る幼児から一瞬たりとも目を離さずに家事をこなすことは、脳に「常にマルチタスクを強いる状態」を作り出します。

ADHD(注意欠如・多動症)の特性がある場合、一つのことに集中しすぎたり、逆に注意が散漫になったりしやすいため、この「監視と作業の並行」は、他の人以上に脳を激しく疲弊させる要因となります。

二つ目は、「複雑なスケジュールを整理する実行機能(じっこうきのう/Executive Function)」です。

これは安全管理とは別の脳の能力で、幼稚園の行事、通院、習い事、そして自分自身の予定を、優先順位をつけてパズルのように組み立てる「計画力」を指します。

ADHDの脳は、こうした目に見えない情報の整理や時間の管理を苦手としており、子供が大きくなって予定が複雑化するほど、それまで必死に維持してきた「自分なりの工夫」が通用しなくなってしまうのです。

さらに研究チームは、この時期が単にADHDを見つけるきっかけになりやすいだけでなく、「ADHDの症状が悪化する可能性のある、きわめて重要な期間」であると述べています。

妊娠中や産後のホルモンの変動は、脳の働きに影響して症状を強める可能性があり、そこに育児の睡眠不足や慢性的なストレスが加わると、注意の維持や段取りがいっそう難しくなる可能性があります。

「育児ストレス」と勘違いされやすい

今回の研究で特に注目すべきは、産後にADHDと診断された母親の半数以上(53.9%)が、その診断を受けるまでの期間に、うつ病や不安障害などの治療を受けていたという事実です。

重要なのは、この治療が「出産してからADHDと診断されるまでの間」に始まっていたという点です。

これはADHDを持つ母親の多くが、育児の困難に直面した際、その原因を「産後うつ」や「不安障害」と診断されていたことを意味します。

なぜ、ADHDではなく「うつ」と判断されてしまうのでしょうか?

ADHDによる「集中しにくさ」や「頭がうまく回らない感じ」、そして「物事に圧倒されてしまう感覚」は、産後うつの症状と非常によく似ています。

例えば、洗濯物やおもちゃを片付けようと思っているのに、何から手を付ければいいか分からず、気づけば散らかったまま放置してしまう、あるいは、通院や幼稚園の行事など「忘れてはいけない予定」が頭から抜け落ちすっぽかしてしまう、というのはADHDの特性から生じる問題ですが、状況だけを見ると育児ストレスによる無気力が原因なのではないか、と誤解されるおそれがあるのです。

このような問題が起きると、母親自身は非常に落ち込んだ状態で診察を受けます。

そのため、医師が表面化している気分の落ち込みだけを重視してしまうと、その根本にあるADHDという特性が見逃され、診断が数年遅れてしまう可能性があるのです。

また研究チームは、これらの「うつ」や「不安」は、誤診ではなく未診断のADHDを抱えたまま過酷な育児を続けた結果として引き起こされた、二次的な反応である可能性も指摘しています。

産後うつや育児ストレスなら、産後4〜5年という期間が経過すると通常は落ち着いてきます。また育児に慣れてきた母親は、部屋の整理整頓、子供のスケジュール管理などの問題が改善していきます。

しかし、出産を機にADHDが顕在化・悪化してしまった母親は、時間の経過で状況が改善されず、むしろ産後4〜5年目から問題の深刻さが目立ちやすくなってくるのです。

部屋が片付かないなどの問題を「育児疲れ」で終わらせない

今回の調査は、実際に医師の診断を受けた人だけを数えており、潜在的にはさらに多くの母親が、自分の特性に気づかぬまま一人で苦しんでいる可能性があります。

産後すぐの時期は、周囲も本人も「お母さんは疲れていて当たり前」だと考え、深刻なサインを見過ごしてしまいがちです。

しかし、研究チームは、産婦人科や小児科の現場で、母親の心の不調の背景にADHDが隠れていないかを検討することの重要性を強調しています。

早い段階で「精神的な問題ではない」と知ることができれば、特性に合わせた具体的なサポートや工夫を取り入れ、親子ともにより健やかな生活を送ることができるはずです。

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