「1と2」の差は大きく、「2000と2001」の差は小さく感じる
研究チームは、この一連の結果を「year–length effect」と呼んでいます。
これは、時間を年数(期間)で表すと、同じ時間であっても心理的に引き延ばされて感じられ、西暦で表すと圧縮されて感じられるという現象です。
重要なのは、この違いが単なる表現の好みではなく、判断の中身そのものに影響している点です。
実験では、時間が長く感じられるほど、その時間に結びついた属性、たとえば熟成や歴史、使用年数といった要素が、評価の中でより重視されるようになることが示されました。
そのため、ウイスキーやワインのように、年数そのものが価値を高める商品では、「10年物」「20年物」といった期間表現のほうが高く評価されました。
実際のオークションデータでも、期間表現で説明されたウイスキーは、平均して約9%高い価格で取引されていました。
一方で、中古品のように古さがマイナス要因になる商品では、結果は逆になります。
「2年前に購入」と書かれた商品は、「2023年に購入」と書かれた商品よりも古く感じられ、評価が下がる傾向が確認されました。
オンラインの掲示板で行われた分析では、「購入年」を書いたときのほうが、「◯年前に購入」と書いたときよりも、平均で約17%高く売れていたことも報告されています。
では、なぜこのような違いが生じるのでしょうか。
研究では、その背景として、人の数量認知の基本的な性質が挙げられています。
私たちの心の中にある数の感覚は、1から2、2から3といった小さな数字の差を大きく感じる一方で、2020から2021のような大きな数字の差は小さく感じる傾向があります。
そのため、数字が大きくなりがちな西暦表現では時間が圧縮されて感じられ、数字が比較的小さい期間表現では時間が引き延ばされて感じられるのです。
この研究は、マーケティング分野だけでなく、老後資金の計画や医療の場での意思決定、気候変動の時間スケールの伝え方などにも応用できそうだと考えられています。
ただし、すべての状況で同じ強さの効果が現れるわけではなく、どの国やどんな商品でも同じように働くかどうかは、今後あらためて確かめる必要があります。
今後は、文化の違いや人それぞれの違い、商品ジャンルの違いなどを含め、時間の表現が人の判断をどのように形づくるのかを、より多様な状況で検証していくことが求められるでしょう。
この研究は、同じ20年でも、「2006年」と書くか「20年物」と書くかで、頭の中の受け取り方は変わることを示しました。
そんな小さな表記の違いが、私たちの「欲しい」「いらない」という判断を、思った以上に動かしているのかもしれません。






















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