名古屋大学がレアメタルなしで「鉄と光」による有用天然物の合成に成功
名古屋大学がレアメタルなしで「鉄と光」による有用天然物の合成に成功 / Credit:A Rational Design of Chiral Iron(III) Complexes for Photocatalytic Asymmetric Radical Cation (4 + 2) Cycloadditions and the Total Synthesis of (+)-Heitziamide A
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名古屋大学がレアメタルなしで「鉄と光」による有用天然物の合成に成功 (2/3)

2026.01.20 21:30:07 Tuesday

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レアメタル不要、鉄と青い光で世界初の不斉全合成

レアメタル不要、鉄と青い光で世界初の不斉全合成
レアメタル不要、鉄と青い光で世界初の不斉全合成 / Credit:A Rational Design of Chiral Iron(III) Complexes for Photocatalytic Asymmetric Radical Cation (4 + 2) Cycloadditions and the Total Synthesis of (+)-Heitziamide A

鉄と青いで本当に複雑な分子を作れるのか?

――その疑問に答えるため、鉄のまわりにくっつく“部品”の組み合わせを見直しました。

これまでの方法では、鉄の周りの3つの部品すべてを高価な「右手・左手を選び分ける特別な部品」にしていましたが、今回は「本当に右手・左手を決める役目は1つで足りる」と考え、その1つだけを特別な部品にし、残り2つは安くて普通の部品に置きかえる作戦にしたのです。

実験では、鉄の塩と2種類の銀の塩を溶かして、この新しいタイプの鉄触媒をその場で作り、そこに材料となる分子を加えました。

そしてマイナス40度くらいの低い温度で青色のLEDライトを当てると、鉄が触媒作用を発揮して新しく6個の炭素が輪になったきれいな形の分子ができあがりました。

またこの新しい触媒を使うと、様々な材料の組み合わせから「教科書に出てくる有名な反応では作りにくい、ちょっとずれた形の6個の炭素の輪っか」を、とても効率よく作れることが分かりました。

できあがる量は条件が良いときにはおよそ9割近くに達し、しかも右手と左手のうち、ほとんど片側だけが選ばれるようなきれいな分け方ができていました。

さらに研究者たちは、「この輪っかはいったいどんな順番で出来上がっているのか」を調べるために、反応時間を変えたり、途中で一度止めて中間の生成物を取り出したりする実験も行いました。

短い時間だけ反応させると、まず小さな輪っかができ、それを長く反応させていくと、だんだん目的の6個の炭素の輪っかに変わっていきます。

それなのに、どのタイミングで反応を止めても、右手・左手の比率はほとんど同じままでした。

このことから、いちばん最初に炭素同士がくっつく瞬間に、すでに右手か左手かが決まってしまい、その後の変化は主に“形を整えているだけ”だと考えられます。

こうして手に入れた「少しずれた輪っかの分子」を鍵として、いよいよHeitziamide Aの合成に挑戦しました。

研究者たちは、少し特別なタイプのチャルコンとイソプレンと呼ばれるジエンを出発原料に選び、この新しい触媒反応でHeitziamide Aの骨組みにそのままつながる中間体を、高い右手・左手の選び分けを保ったまま作り出しました。

そこからは、いくつかの段階に分けて少しずつ部品を付け替えたり形を変えたりすることで、最終的なHeitziamide Aの構造に到達しています。

この分子は理論的には8通りもの立体的なバリエーションがありえますが、実際には狙った1種類だけを選び取ることに成功しました。

そのため著者たちは、この成果を「(+)-Heitziamide Aの世界初の不斉全合成」として報告しており、天然物合成の世界でも大きな一歩になっています。

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