マジックマッシュルームの幻覚成分はキノコのための「虫よけ」だった
マジックマッシュルームの幻覚成分はキノコのための「虫よけ」だった / Credit:Canva
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マジックマッシュルームの幻覚成分はキノコのための「虫よけ」だった

2026.01.26 21:30:53 Monday

イギリスのプリマス大学(UoP)で行われた研究によって、マジックマッシュルームと呼ばれる幻覚性キノコが作るシロシビンという成分が、人の意識を変えるだけでなく、虫にとっては毒として働く可能性がみえてきました。

研究ではマジックマッシュルーム由来の成分を含むエサをハエの幼虫に与えたところ、、成長して成虫になる前に死亡したり、成虫になっても体も小さく、動きも鈍くなることが確かめられたのです。

人間から見ると「心の薬」や「ドラッグ」として語られてきたシロシビンが、キノコから見ると虫たちから身を守る化学兵器だった可能性があります。

著者たちは、自然界でのシロシビンの役割をを実験で探った初めての研究だと述べています。

研究内容の詳細は2025年12月19日に『bioRxiv』にて発表されました。

Wherefore the magic? The evolutionary role of psilocybin in nature https://doi.org/10.64898/2025.12.17.694186

マジックマッシュルームは誰のための「薬」なのか

マジックマッシュルームは誰のための「薬」なのか
マジックマッシュルームは誰のための「薬」なのか / Credit:Canva

古い儀式での利用や、最近のうつ病・PTSDの治験、いわゆる“トリップ体験”など、どうしても「人がどう感じるか」に注目しがちです。

しかし、森の地面にじっと立っているキノコ本人にとって、人間が不思議な体験をするかどうかは、どうでもよいことです。

キノコにとって切実なのは、「自分を食べに来る虫やナメクジから、どう身を守るか」というサバイバルの問題です。

実際、キノコはふだんから、幼虫やカタツムリにしばしば激しくかじられています。

植物がトゲや辛味、進化させてきたように、キノコもさまざまな「化学兵器」を身につけていることが知られています。

その中でもシロシビンは特に奇妙です。

セロトニン(気分や食欲を調整する神経伝達物質)に似た形をしていて、脳のスイッチにぴったりはまり、意識や感情を大きく揺らします。

しかもこのシロシビンは、Psilocybe だけでなく、いくつものキノコのグループで独立に何度も進化してきたことが分かっています。

さらに、シロシビンを作るための遺伝子のセット(遺伝子クラスター)は、違うキノコ同士で「コピーの貸し借り」をしたような形跡さえあります。

実際に、シロシビンづくりの遺伝子の束が、丸ごと別のキノコの仲間に“引っ越し”したように見えるケースもいくつも報告されています。

このように種を超えて使いまわされている分子は「有用」だと考えられるサインでもあります。

ただ「自然界で何をしているのか」は、これまでほとんど調べられていませんでした。

シロシビンは「昆虫を遠ざける防御の薬なのではないか」「逆に虫の行動を操作して胞子をばらまかせているのではないか」など、さまざまな仮説が出ていましたが、どれもほとんど検証されていなかったのです。

そこで今回、研究チームは「シロシビンが本当に虫よけや行動操作につながりうるのか」を、ハエと野外のキノコを使って数字で確かめることにしました。

次ページ「人にはドラッグ、虫には毒」マジックマッシュルームの二つの顔

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