推し政党が変わると脳はこう動く――政治脳が見ているのは政治理念ではなく単純な『敵味方』だった
推し政党が変わると脳はこう動く――政治脳が見ているのは政治理念ではなく単純な『敵味方』だった / Credit:Canva
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推し政党が変わると脳はこう動く――政治脳が見ているのは政治理念ではなく単純な『敵味方』だった (3/3)

2026.02.10 20:00:51 Tuesday

前ページ崇高な「政治理念」より単純な「敵・味方」が政治的な考えの背後に潜んでいる

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政治理念より単純な「敵味方判定」が強いのはなぜか?

政治理念より単純な「敵味方判定」が強いのはなぜか?
政治理念より単純な「敵味方判定」が強いのはなぜか? / Credit:Canva

今回の研究により、私たちが同じ映像に異なる反応を示すようになる背景には、脳の中の感情や記憶、報酬に関わるネットワークがじわじわと組み替わっていく可能性が示されました。

とくに扁桃体や海馬、線条体といった領域では、2年半前とくらべて活動パターンが大きく変わっており、その変化の大きさは「この政党は味方か敵か」という評価の揺れと強く結びついていました。

一方で、「右派寄りか左派寄りか」といった政治理念の位置の変化と、脳の変化のつながりはごく小さく、研究者たちは「政治的な世界観の違いよりも、仲間意識や『うち側/そと側』の評価の方が脳には濃く刻まれている」と示唆しています。

政治に熱心な人々は「政治理念」よりも遥かに「敵・味方の感覚」を重視して脳を働かせていたと言えるかもしれません。

これは、人類の歴史を振り返ってみると、ある意味で当然の結果なのかもしれません。

人間が誕生してからの長い長い時間のほとんどは、国家や議会もなければ、「保守」や「リベラル」といったいまの意味での抽象的な政治理念もほとんど存在しない、狩猟採集の時代でした。

せいぜい数十人から数百人ほどの小さな集団で暮らし、日々の生き残りをかけて動物を追い、木の実を探し、他の集団とときには協力し、ときには争っていたと考えられています。

そうした世界でいちばん重要だった政治情報は、「この人は味方か?それとも自分たちを傷つけるかもしれない相手か?」という、ごくシンプルな線引きだった可能性があります。

誰が親族で、誰が同盟者で、誰が危険な相手か──その見きわめを間違えると、食料を分けてもらえなかったり、争いに巻き込まれたり、最悪の場合は命を落としてしまいます。

逆に、抽象的な政治理念の違いをいくら議論しても、明日のごはんや身の安全にはほとんど影響しにくいことが多いでしょう。

もちろん、当時の人びとにも「こう生きるべきだ」「この精霊や神さまを大事にすべきだ」といった価値観や物語はあったと考えられており、「まったく理念が無かった」と言い切ることはできません。

ただ、現在のように「左派・右派」や「保守・リベラル」といった抽象的で全国規模の政治理念がはっきり形になるのは、農耕社会の発展や都市国家・近代国家の誕生、さらにフランス革命以降の議会政治の広がりといった、かなり最近の歴史の話です。

人類の進化のスケールで見れば、ごくごく新しい“オプション”にすぎません。

論文において研究チームも、過去のさまざまな研究をふまえながら、「脳が政治的立場を決める」というよりも、「長い時間をかけて積もった社会経験や心理的なプロセスが、脳の反応のクセを作っていくのではないか」と考察しています。

実際、他の研究でも、あるグループと一緒に行動したり、共通の敵を持ったりすると、そのグループへの好悪に応じて扁桃体や線条体の働きが変わることが知られており、今回の結果はそれが一人の人の中で長期的にも起きうることを示した、と位置づけられています。

また、物語理解に関わる「デフォルトモードネットワーク」と呼ばれる広いネットワークには予想ほど強い効果が見られなかったことから、「今回変わっていたのは物語の骨組みというより、その物語にどんな感情をくっつけるか、という部分だったのかもしれない」とも考察しています。

もちろん、この研究にもいくつかの限界があります。

まず、参加者はたった21人で、しかもイスラエルの政治に強い関心を持つ若い大人たちに限られていました。

そのため、日本をふくむ他の国や、政治にあまり興味がない人でも同じようなことが言えるかは調べなければなりません。

また政治的な考えの変化と脳の活動パターンの変化ついても、生物学的な変化が根底から解明されたというより、観察研究から導かれた関係に由来するものです。

それでもなお、この研究が投げかけるメッセージはかなり大きいものです。

この成果を応用できれば、ニュース番組やSNSの情報が、人々の脳をどのように「うち対あいつら」というモードとどう関係しているのかを、感情・記憶・報酬ネットワークのレベルで理解できるようになるかもしれません。

対立するグループの若者同士を交流させるプログラムや、偏見を減らす授業の効果を、「本当に脳の中で敵→元敵→仲間へと変わっているのか」という観点から評価することだって、将来的には可能になるでしょう。

また、私たち自身がニュースを見るとき、「これは政策の話なのか、それとも“どのチームに入るか”をあおられているだけなのか」を意識するきっかけにもなります。

政治が熱くなりやすいのは、私たちが論理を捨てているからではなく、脳がそもそも“仲間分け”に強く反応する作りを持っているから――今回の結果は、その見方にかなり現実味を与えています。

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推し政党が変わると脳はこう動く――政治脳が見ているのは政治理念ではなく単純な『敵味方』だった (3/3)のコメント

ゲスト

だから政治と宗教の話は他人とはするなという人付き合いのコモンローができたわけなのですがね…。
若いものは人の話を聞こうとしない…。

ゲスト

いかにもイスラエルが研究しそうなネタだな。
理にかなってる。

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