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推し政党が変わると脳はこう動く――政治脳が見ているのは政治理念ではなく単純な『敵味方』だった

2026.02.10 20:00:51 Tuesday

イスラエルのテルアビブ大学(TAU)で行われた研究によって、政治に関心の高い21人に「同じ政治動画」を2年半ぶりに見せ直すと、脳の奥のほうにある回路の活動パターンが、同じ人とは思えないくらい違っているケースが多いことがわかりました。

しかも、その変化と強く結びついていたのは「この政党やこの政治家は味方か敵か」といったレベルでの『推し相手』の見方の変化のような、人間臭い要素でした。

一方で、政治理念の変化と結びついた脳活動パターンの変化は、ごく一部の領域にしか見られず、その数は「この政党や政治家を味方かどうか」と見る評価と結びついた領域のおよそ百分の一程度にとどまりました。

この結果は、脳が政治的立場を決めているというより、「誰を味方とみなしてきたか」という経験の変化にあわせて、脳の反応パターン自体があとから育っていくのかもしれない、という可能性を示しています。

あなたが今日見ているニュースも、気づかないうちに“味方判定”の回路を塗り替えてはいないでしょうか?

研究内容の詳細は2026年1月26日に『Communications Psychology』にて発表されました。

Changes in political attitudes are associated with changes in neural responses to political content https://doi.org/10.1038/s44271-026-00395-x

政治的な考えは何が動かしているのか?

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「昔はなんとも思わなかった動画が、数年後に見たらやけに刺さる」。

あるいはその逆で、「前は感動したのに、今見ると寒い」。

そんな経験、けっこうありませんか。

動画そのものは同じなのに、見ている自分のほうが少し変わっただけで、心の反応はあっさり別物になります。

まして政治ニュースとなると、同じ見出しを読んでも「なるほど」とうなずく人と「いや、それは違う!」と怒る人が同時に生まれる。

しかも本人たちはわりと本気で、「私は冷静に事実を見ているのに、相手が偏っている」と思いがちです。

ここに、政治がやたら熱くなる“やっかいな魅力”があります。

こうした「受け取り方の違い」は、心理学ではよく“解釈のレンズ”にたとえられます。

何が正しいかを決める前に、私たちはまず世界を“どういう意味の出来事として見るか”を、頭の中で組み立てているからです。

論文の導入でも、作家マーク・トウェインの有名な言葉が引かれています。

十四歳のころは父親が信じられないほど無知に見えたのに、二十一歳になったら「父が七年でずいぶん学んだ」と驚いた、という話です。

でも本当は、父が急に賢くなったわけではなく、見ている側のレンズが変わった。

政治もこれと似ています。

政策の文章を読んで判断しているようで、じつはその前に「この人は信用できる?」「こっち側の人?」という、人間関係のフィルターが先に動いてしまうことがあるのです。

ここ数年、少なくともイスラエルのこの時期では政治の世界でこの“フィルター問題”がさらに強まっている、と研究者たちは見ています。

ポイントは二つあります。

ひとつは「分断が強まる」こと。

もうひとつは「政治が人物中心になりやすい」ことです。

昔は、政治の立ち位置をざっくり「右か左か」で語ることが多かったのに、最近は「誰を支持するか/誰に反対するか」が前に出る場面が増えました。

すると議論の中心は「どんな政策がよいか」から、「あなたは味方?それとも敵?」にすり替わりやすくなります。

すると不思議なことに、政策の細かい中身を読んでいなくても、感情だけは一瞬で燃え上がる。

これは現代の政治が持つ、ちょっと怖いけれど強力な特徴です。

では、この“レンズの変化”は脳の中ではどう扱われているのでしょう。

実はこれまでの脳研究でも、「政治的に同じ立場の人同士は、政治コンテンツを見たときの脳の反応が似やすい」といった報告はありました。

ただ、そうした研究の多くは「右派の人」と「左派の人」を同じ時点で比べる、いわば横並びの比較です。

これだと、どうしても残る大問題があります。

「脳の性質が先にあって政治の考えが決まるのか」、それとも「政治の経験が積み重なって脳の反応の型が作られるのか」。

ニワトリと卵のように、どちらが先かが見えにくいのです。

しかももうひとつ、研究者を悩ませる現実があります。

人の世界観や政治的な好みは、ふつうはそんなに簡単には変わりません。

これは変化を調べるチャンスそのものが低く研究データが得られにくいことを意味します。

ところが研究者たちは、都合のよい(ただし社会としては大変な)出来事に出会います。

2019年から2021年にかけて、イスラエルでは政治が不安定になり、選挙が繰り返され、政党の組み合わせやリーダーの立ち位置が目まぐるしく変わりました。

昔の「右・左」だけでは説明しにくい、奇妙な再編が起きたのです。

とくに象徴的なのは、「同じ右派」とされていた政治家同士でも、ある時期からは“同じ陣営”に見えなくなったり、逆に理念が遠いはずの相手と手を組んだりした点です。

こうなると、有権者の頭の中で起きるのは単なる政策の再評価というより、「裏切られた」「こっち側に来た」「あっちはもう敵だ」といった、仲間分けの揺れです。

研究者たちは、この政治の大きな揺れが、個人の解釈を動かす“自然の実験場”になると考えました。

もし本当に、推し政党や推し政治家への見方の変化に伴って、脳の反応パターンまで大きく変わってしまうのだとしたら、私たちの世界の見え方はどこまで自由で、どこまで過去の経験に縛られていると言えるのでしょうか。

次ページ崇高な「政治理念」より単純な「敵・味方」が政治的な考えの背後に潜んでいる

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