なぜ水深490メートルだったのか?
このオンデンザメが泳いでいたのは、水深約490メートル。そこは南極海の中でも、複数の水層が重なり合うエリアの中にあります。
南極海では、下層の冷たく重い海水と、氷の融解による上層の淡水が混ざりにくいため、水深約1000メートルまで強く層構造が形成されています。
ジェイミソン氏によると、このサメが維持していた約500メートルの深さは、その層の中で最も温かい水塊だった可能性があります。
つまり、南極の海といっても一様に極寒というわけではなく、サメにとって比較的“過ごしやすい”帯が存在しているのです。
映像には、エイに似た近縁種も映っていましたが、こちらは以前から南極海での分布が知られていました。
サメだけが、今回初めて記録された存在だったのです。
気候変動による分布拡大の可能性も指摘されていますが、南極周辺は観測データが極端に少ないため、現時点で明確な結論は出ていません。
もともと少数がひっそりと生息していた可能性も十分にあります。
私たちは海の25%しか見ていない?
南極海のこの深度に設置される研究カメラはごくわずかで、しかも運用できるのは南半球の夏(12月〜2月)だけです。
一年の約75%の期間、そこでは誰も見ていないのです。
今回の発見は「南極にはサメはいない」という常識を揺さぶりました。
しかし同時に、それは私たちがまだ深海をほとんど理解していないという事実も示しています。
光の届かない490メートルの暗闇には、まだ“いるはずのない生き物”が静かに泳いでいるのかもしれません。


























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