なぜ人工培養脳に棒立てゲームをさせたのか?

手のひらの上で定規をまっすぐ立ててみると、意外と難しいことに気づきます。
少し傾いたと思ったら、あわてて手を動かして立て直す。
そのくり返しで、だんだんコツをつかんでいきます。
実はこの棒立て問題(倒立振子:とうりつしんし)は、工学ではれっきとした研究テーマで、ロボットやAIの性能チェックとしてよく使われます。
そんな制御問題を、人間ではなく「人工培養された脳」に解かせてみるとどうなるでしょうか。
脳は、同じ大きさのコンピュータに比べて圧倒的に少ない電力で動き、たった1個のニューロン(神経細胞)を真似るだけでも、深層学習の層がいくつも必要になると指摘されています。
そこで近年注目されているのが、幹細胞から育てた人工培養脳「脳オルガノイド」です。
この脳オルガノイドは上手く育てると、ゴマ粒より少し大きい程度の塊の中に、興奮するタイプとブレーキ役のニューロンに加え、それらを支える星形の細胞(グリア)などが層状に並び、初期の大脳皮質のような回路網をつくります。
しかしこれまでの「脳オルガノイドに仕事をさせる」実験の多くは、画像のパターン認識や単純な反応の測定にとどまり、「ある目標に向かって上達していく様子」を調べるにはあまり向いていませんでした。
もし脳オルガノイドが、何度も失敗しながら棒を倒れにくくしていけるなら、それは「目と耳と体と報酬ホルモンをすべて取り去っても、脳組織そのものにかなり強い学習能力が元から備わっている」という、少しゾクッとする結論につながります。
本当にそんなことがあり得るのでしょうか。





























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