共食いの恐れが「強固な家族社会」を生んだ?
もしビッグス型シャチが、時にレジデント型シャチを襲うことがあるなら、それはシャチ社会の進化を説明する重要な要素になります。
実はレジデント型シャチの社会構造は、哺乳類の中でも非常に特殊です。
多くの動物では、子どもは成長すると群れを離れます。
しかしレジデント型シャチでは、オスもメスも生涯にわたって母親の群れに留まり続けるのです。
この極端な「家族密着型社会」は長年研究者を悩ませてきました。
今回の研究では、その理由として捕食圧が提案されています。
もしビッグス型シャチが潜在的な捕食者であるなら、大きく結束した群れを作ることは重要な防御戦略になります。
実際、研究者の観察では
・レジデント集団の大きな群れが小規模のビッグス群を追い払う
・ビッグス型シャチがレジデント群のいる海域を避ける
といった行動も報告されています。
つまり、団結することで捕食者を遠ざけている可能性があるのです。
似た行動は他のクジラにも見られます。
たとえばゴンドウクジラの群れは、シャチに対して集団で立ち向かうことで知られています。
ただし今回の研究については、慎重な意見もあります。
背びれの歯跡だけでは捕食を断定できないため、社会進化を説明するには証拠がまだ十分ではないという指摘もあるのです。
シャチにとっては「共食い」ではないのかも
もし今回の解釈が正しければ、シャチの世界では「同種捕食」に近い出来事が起きていることになります。
しかし研究者は、シャチ自身にとってそれは必ずしも「共食い」ではない可能性も指摘しています。
レジデント型とビッグス型は生活様式も文化も異なり、互いに交流することがありません。
そのため彼らにとっては、同じシャチというより「別の種類のクジラ」に近い存在かもしれないのです。
研究者は次のように述べています。
「彼らは互いに交流することも、一緒に過ごすこともありません。彼らにとってはただの別のクジラなのです」
海の頂点捕食者として知られるシャチ。
しかしその社会は、単なる捕食者の世界ではなく、複雑な文化と進化の歴史が交差する場所でもあります。
今回見つかった2枚の背びれは、その謎の一端を垣間見せているのかもしれません。

























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