母の不寛容さと搾取性が、娘の感情の不安定さと強く関係していた
研究チームがさらに分析したところ、母親のナルシシズム傾向の中でも、娘の感情の安定性の低さと特に強く関連していたのは「不寛容さ」でした。
次に強く関係していたのが「搾取性」です。
これはつまり、娘から見て、母親が自分と異なる考えや感情を受け入れにくく、さらに娘を自分の都合で動かそうとするように感じられるほど、娘側の感情の安定が低くなりやすいということです。
もちろん、この結果だけで「母親が原因で娘が情緒不安定になる」と断定することはできません。
しかし、家庭内で感情を受け止めてもらえないと感じる経験が続くと、娘が自分の感情をどう扱うかに影響する可能性があります。
論文では、この背景を愛着理論とも結びつけています。
子どもは本来、母親などの主要な養育者との関係を通じて、「自分は受け入れられる」「困った時に助けてもらえる」という感覚を育てていきます。
ところが、母親が共感的でなく、自分の都合や感情を優先するように感じられる場合、子どもは安心して感情を表に出せません。
その結果、娘は自分の気持ちを隠し、母親の顔色をうかがい、他人の要求を優先するようになる可能性があります。
この影響は、目に見える虐待とは違い、外からは分かりにくいものです。
家庭としては一見普通に見えても、子どもが「本音を出すと否定される」「自分の感情より親の機嫌が大事」と感じ続けていれば、それは感情的な孤独につながる可能性があります。
研究者たちも、ナルシシズム的な母親との関係では、娘が厳しい批判を避けるために感情を抑え込みやすいと説明しています。
ただし、この研究には重要な限界があります。
まず、母親本人を臨床的に診断した研究ではありません。
測定されたのは、あくまで「娘が母親をどう感じているか」です。
そのため、実際に母親がナルシシズム人格障害であるかどうかは分かりません。
また、この研究は母親の特徴が娘の情緒不安定を直接引き起こしたと証明したわけでもありません。
家庭の経済状況、父親との関係、本人の性格、文化的背景など、他の要因が関係している可能性もあります。
さらに対象が限られているため、結果をそのまま他国や男性、幅広い年齢層に当てはめることには慎重であるべきです。
それでもこの研究は、親の共感性や感情への向き合い方が、子どもの感情調整能力と関係する可能性を示しています。
研究チームは今後、母親のナルシシズム傾向と関連する心理的影響を和らげる介入プログラムや、他の心理的要因との関係を調べる研究が必要だと述べています。
親子関係で大切なのは、子どもを思い通りに動かすことではなく、子どもが自分の感情を安心して持てる場所をつくることなのです。



















































