牛のゲップを「メタンまみれ」にしてた真犯人、ついに判明
牛のゲップを「メタンまみれ」にしてた真犯人、ついに判明 / Credit: Xie et al., Science, 392, eadv4244 (2026)
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牛のゲップを「メタンまみれ」にしてた真犯人、ついに判明 (2/4)

2026.05.29 19:10:21 Friday

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細胞の奥で見つかった、メタン生成の加速装置

細胞の奥で見つかった、メタン生成加速工場
細胞の奥で見つかった、メタン生成加速工場 / Credit: Xie et al., Science, 392, eadv4244 (2026)

この長年の謎に、ようやく答えを出したのが、中国科学院水生生物研究所の魏苗(Wei Miao)教授たちの研究チームです。

研究チームはまず、ずっと滞っていた繊毛虫の遺伝情報の解読を、大きく進めました。

それまで世界で53個ほどしか読まれていなかったゲノム情報を、なんと450個のゲノムからなるカタログにまで広げたのです。

そのうちの87%は、今回新たに読み解かれたものでした。

この大規模な解析の結果、驚くべきことがわかりました。

これまで「32属274種以上いる」とされてきた反芻胃の繊毛虫は、今回の解析では「18属65種」と、思っていたよりもずっと少ない仲間として整理されたのです。

形だけで分類していた時代の図鑑が、遺伝情報によって大きく書き換えられました。

次に研究チームは、代表的なルーメン繊毛虫(ダシトリカ)を取り出し、電子顕微鏡でじっくり調べました。

すると細胞のなかに、ある楕円形の小さな構造が、いくつもぽつぽつと並んでいるのが見えました。

実は、この構造そのものは古くから観察されていたのですが、いったい何をしているものなのか、その正体は長らくはっきりしていなかったのです。

しかし研究チームが調べたところ、2つの大切な酵素が備わっていることがわかりました。

ひとつは水素を作るための酵素、もうひとつはまわりの酸素を取り除くための酵素です。

つまりこの構造は、ふたつの仕事を同時にこなしていました。

水素を作って、メタン菌にエサとして渡すこと。

そしてまわりの酸素を取り除いて、酸素が大の苦手なメタン菌が安心して暮らせる環境を整えること。

メタン菌にとって、これ以上ない「至れり尽くせりのサービス」だったわけです。

しかも水素ボディは、繊毛虫の表面に生えている繊毛の付け根に、寄り添うように集まっていました。

繊毛が多く生えている種類ほど、その根元に並ぶ楕円構造の数も増える──そんなきれいな比例関係まで成り立っていたのです。

研究チームはこの構造を、これまで知られていない細胞内の新たな部分(細胞小器官)として「水素ボディ」(hydrogenobody)と名付けました。

これまでの研究により、繊毛虫の細胞内には水素を作る似た部品(ハイドロジェノソーム)があることは知られていましたが、今回の水素ボディは、それとは明確に別物でした。

昔から知られていた水素生成装置(ハイドロジェノソーム)は仕切りの膜が二重で、ミトコンドリアから進化してきたと考えられているのに対し、水素ボディはたった一枚の膜で包まれていて、ミトコンドリアやハイドロジェノソームとは別ルートで進化してきた可能性があるのです。

しかもその膜は、厚さわずか5ナノメートル。

1ミリメートルの20万分の1という、想像を絶する薄さです。

研究チームは論文のなかで、こうした「膜が一枚だけ」という特徴は、水素ボディがミトコンドリア由来ではなく、従来のハイドロジェノソームとも異なる進化的な起源を持つ可能性を示している、と説明しています。

働きは似ているけれど、生まれも育ちもまるで違う、もう一種類の細胞内部品だったというわけです。

研究を率いた魏苗教授は、こう述べています。「この特徴は、水素ボディがミトコンドリア由来ではないことを示しており、異なる進化的起源を持つ可能性がある」。

働きは似ているけれど、生まれも育ちもまるで違う、もう一種類の細胞内部品だったわけです(詳しくは後述)。

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