光子は「切ろう」とすると無限に増える――でも外からは1個に見えた
光子は「切ろう」とすると無限に増える――でも外からは1個に見えた / Credit:Canva
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光子は「切ろう」とすると無限に増える――でも外からは1個に見えた (2/4)

2026.06.01 19:30:32 Monday

前ページ割れないはずの光を、切るということ

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光子を切ろうとすると無限に湧く——―なのに、見ると1個

光子を切ろうとすると無限に湧く——―なのに、見ると1個
光子を切ろうとすると無限に湧く——―なのに、見ると1個 / Credit:Canva

帯の一部を鏡でさえぎったら、残りはどうなるのか。

素直に考えれば、答えはこうなるはずです。

こちら側に1個。そして向こう側には、何もない空っぽの空間——真空が残る。

のつぶは割れないのだから、これ以外の答えはなさそうに思えます。

ところが、研究チームが光と電磁場のふるまいを記述する量子の方程式を使って、きちんと計算してみると、この素直な予想は、まちがいだとわかりました。

光のつぶを切ろうとすると、減るどころか、新しいつぶが次々に生まれてきたのです。

しかもその数は、0個、1個、2個……と、どこまでも続いていく。

無限個までのあらゆる可能性が、いっぺんに含まれた状態でした(※より正確に言えば、「光が何個ある状態か」という見方をしたときに無限個ぶんまでふくらんでいた、ということです)。

「0個でもあり、1個でもあり、2個でもあり、それらが重ね合わさったり混ざり合ったりして含まれている」——これは、リンゴのように数がはっきり決まっている世界とは、まるで違います。

ふたを開けるまで何個あるか決まっていない。量子ならではの、ふしぎなあり方です。

割れないはずの光のつぶを、ほんの少し切ろうとしただけ。

なのに結果は、無限個のつぶがざわめく、おそろしく複雑な状態でした。

神話のヒュドラは「1本切れば2本」でしたが、光のつぶは「少し切れば無限個」。

神話の怪物さえ、はるかに上回る奇妙さだったのです。

実験の様子を模式的に示したもの
実験の様子を模式的に示したもの / 横軸が空間の位置x、縦軸がエネルギーの密度です。鏡はx=0の位置にあります。

——と、ここで話が終われば、「光を切ると、とんでもなく複雑になる」という、それはそれで面白い結論でした。

ところが、本当に不思議なのはここからです。

研究チームが、切れ目を境にして、その左右を詳しく調べてみると、まったく予想外のことが見えてきました。

切れ目のあたり——専門的には「遷移領域」と呼ばれる、ごく狭い区間——をはさんで、その片側だけを見ると、「光のつぶが、ふつうに1個あるだけ」。

反対側を見ると、「ただの空っぽの真空」。

そんな、拍子抜けするほどありふれた景色が、そこにはあったのです。

全体としては、無限個のつぶが重なり合った、超のつく複雑な状態のはずです。

それなのに、見る場所を切れ目の左右にしぼると、まるで無限個など最初からいなかったかのように、ごく当たり前の顔をしている。

この研究について取材に対しコメントを寄せた、英ヨーク大学のサミュエル・ブラウンスタイン氏は、この不思議さをこう言い表しています。

量子の世界では「恐ろしく複雑なものが、まったく単純なものに見せかけることができる」のだ、と。

正体は、無限のつぶがひしめく途方もない怪物なのに、こちらが見ている範囲では、すました顔で「ただのつぶ1個ですよ」「ここは何もない空っぽですよ」と、すっかり単純なふりをしてみせる——そんなイメージです。

ここまでで、なぞなぞは3つに増えました。

割れないはずの光から、そもそもなぜ、つぶが湧いて出るのか。

湧いたつぶは、いったいどこにいるのか。

そして——なぜそれが、よりによって無限という数になるのか。

以降では、この3つの謎を、ひとつずつ見ていきます。

次ページ光のつぶは「何もない空間」から湧いていた

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