太陽系には「追放された氷の巨大惑星」がいたかもしれない――痕跡は、今も衛星に刻まれている
太陽系には「追放された氷の巨大惑星」がいたかもしれない――痕跡は、今も衛星に刻まれている / Credit:Canva
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太陽系には「追放された氷の巨大惑星」がいたかもしれない――痕跡は、今も衛星に刻まれている (3/5)

2026.06.02 20:10:17 Tuesday

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私たちの太陽系の衛星は奇跡の1%をくぐっていた

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Credit:Canva

今回の研究で新たに浮かびあがったのは——ほとんどの筋書きで、衛星たちが壊されてしまう、という現実でした。

すぐ近くを巨大な惑星がかすめるたびに、衛星たちの軌道は大きく揺さぶられます。

それまで穏やかに回っていた衛星は、たがいの軌道が乱れてぶつかり合い、あるいは軌道からはじき出されて、宇宙の闇へと消えていきました。

木星でも天王星でも、衛星が壊されずに残れたのは、1回の計算あたり15%にも届きません。

試した筋書きの大半で、衛星たちは無残に失われてしまいました。

なかでも、いちばん激しく壊されたのが天王星の衛星たちです。

天王星では、えり抜いた122通りの筋書きのうち、衛星が一度も壊れずに済んだものは、ごくわずかしかありませんでした。

理由は、その”立ち位置”にあります。

巨大惑星が窮屈に並んでいた時代、天王星はちょうど真ん中あたりにいました。

内側には木星と土星、外側には海王星、そして並びのどこかには、あの”余分な惑星”。

つまり天王星は、どの方向から巨大惑星が暴れ込んできても、まきぞえを食ってしまう場所だったのです。

研究者の言葉を借りれば、天王星はまさに「間の悪い場所に、間の悪いタイミングで」居合わせてしまった——というわけです。

とはいえ、いまの木星には4つの大きな衛星が、天王星にも5つの衛星が、ちゃんと寄り添っています。

では、私たちの太陽系は、どうやってこの破壊をくぐり抜けたのでしょう。

その答えを探るうちに、研究者たちは意外な事実に行き当たりました。

鍵をにぎっていたのは、あの”余分な惑星”の数でした。

シミュレーションには、最初に余分な氷惑星を「1つだけ」置いた筋書きと、「2つ」置いた筋書きがあります。

そして面白いことに、木星の衛星と天王星の衛星とでは、生き残りやすい筋書きがちょうど正反対でした。

木星の衛星は、余分な惑星が「2つ」あった筋書きで生き残りやすく、天王星の衛星は「1つだけ」の筋書きで生き残りやすい。

一方を立てれば、もう一方が倒れる——衛星たちの生存条件は、そんな「皮肉な綱引き」状態にあったのです。

だからこそ、木星と天王星の衛星が”両方そろって”無事に残った筋書きは、122通りの中でもほんの1〜2例——全体の1%ほどしか見つかりませんでした。

ありえたはずの組み合わせのほとんどで、どちらかの衛星が犠牲になっていたのです。

そして、その”両方無事”の1%には、興味深い捻れがありました。

2例とも、「余分な惑星が1つ」の筋書きだったのです。

これは本来、天王星の衛星に有利な条件——つまり天王星に味方する筋書きの中で、木星までもがたまたま運よく生き延びた、例外的なケースでした。

(研究チーム自身は、全体としてはむしろ”余分な惑星は2つ”だった可能性のほうを支持しています。そのほうが、木星にとっていちばん穏やかに済むからです。)

では、私たちの太陽系では、実際にはどちらが起きたのでしょう。

その決め手になるのが、木星の衛星たちのいまの姿です。

木星の内側の3つの衛星——イオ、エウロパ、ガニメデ——は、いまもきれいなリズムをそろえて回り続けています(ラプラス共鳴)。

この精巧な”足並み”は、いったん大きく乱れると、そろえ直すのは簡単ではありません。

だからこそ、それがいまも保たれていること自体が、「木星は深い接近を受けず、衛星を壊さずに済んだ」何よりの証拠になります。

いわば私たちは、すでに答えの半分を知っているのです——木星の衛星は、ほぼ無事だった、と。

そして木星が無事だったのなら、さきほどの綱引きの理屈からいって、しわ寄せは天王星に向かいます。

ここで知っておきたいのが、天王星という惑星そのものの”変わり者”ぶりです。

天王星は、自転軸がほぼ真横に倒れた「横倒しの惑星」として知られています。

その原因は、はるか昔、天王星に巨大な天体が激突し、惑星ごと横倒しにしてしまった——という大事件だと考えられています。

じつは、この”横倒しの衝突”のときにも、天王星の衛星たちは激しく揺さぶられたはずだ、と以前から指摘されてきました。

そこへ、別件となる大引っ越しの影響が、もう一撃を加えます。

こうして研究者たちは、ひとつの新しい見立てにたどり着きました。

天王星の衛星たちは、二つの大事件——はるか昔に惑星を横倒しにした巨大衝突と、今回見てきた大引っ越し——のそれぞれで、ばらばらに壊れかけるほど激しく揺さぶられた可能性が高い、というのです。

この惑星が太陽系の中で不遇ならば、そのまわりを回る小さな衛星たちは、もっと不遇でしょう。

そこで研究者たちは考えました。天王星の衛星のどこかに、この二度の大惨事の記録が刻まれているはずだ、と。

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