どうやって「131億年前のクエーサー」と特定したのか?
遠い宇宙を観測することは、過去の宇宙を見ることでもあります。
なぜなら、光が私たち観測者のもとに届くまでには時間がかかるからです。
たとえば、約131億光年彼方の天体を見ているとき、私たちは現在のその天体ではなく、約131億年前に放たれた光を見ていることになります。
今回発見された記録更新級のクエーサーは、宇宙誕生から約6億7000万年後に存在していたと考えられています。
現在の宇宙年齢を約138億年とすると、宇宙がまだ現在の5%ほどの年齢しかなかったころの姿です。
ここで重要になるのが「赤方偏移」です。
赤方偏移とは、宇宙の膨張によって、遠くの天体から届く光の波長が引き伸ばされる現象です。
光は波の性質を持っており、波長が短いほど青っぽく、波長が長いほど赤っぽくなります。
宇宙が膨張すると、その空間を進んできた光の波長も引き伸ばされるため、遠く古い天体ほど、光が赤い方向へずれて見えるのです。
天文学では、このずれの大きさを「z」という値で表します。
たとえば、赤方偏移7(z=7)の天体では、光の波長が放たれた当時の約8倍に引き伸ばされていることを意味します。
そして一般に、赤方偏移の値が大きいほど、その天体は遠く、より古い時代の宇宙に存在していたことになるのです。

そのため「赤方偏移7以上のクエーサー」とは、つまり宇宙がまだ非常に若かった時代に存在していたクエーサーを指します。
これまで赤方偏移7以上のクエーサーは、わずか9天体しか知られていませんでした。
しかし今回、新たに12天体が加わりました。
これは、初期宇宙における超巨大ブラックホールの研究にとって、大きなサンプルの増加です。
なかでも、EUCL J172902.75+641018.1は赤方偏移7.77、EUCL J125308.55+705432.3は赤方偏移7.69と測定されました。
これらは、これまでに知られていた最遠方・最古クラスのクエーサー記録を更新する天体です。
宇宙がまだ6億7000万年ほどしか経っていない時代に、すでに超巨大ブラックホールが周囲の物質を飲み込み、クエーサーとして明るく輝いていたことになります。
これは、宇宙初期のブラックホール形成に関する大きな謎をさらに深める結果です。
なぜなら、超巨大ブラックホールは太陽の何百万倍、場合によっては10億倍もの質量を持つ天体だからです。
それほど巨大な存在が、宇宙誕生から数億年という短い時間でどのように生まれ、どのように成長できたのかは、現代天文学における重要な未解決問題です。
宇宙初期に「超巨大ブラックホール」が存在できた謎
今回の発見によって、「宇宙初期にも超巨大ブラックホールがあった」という事実は、より強く示されました。
しかし、それは同時に「では、どうやってそんなに早く巨大化したのか」という疑問をさらに大きくします。
ブラックホールは、周囲のガスを飲み込んだり、他のブラックホールと衝突・合体したりすることで成長すると考えられています。
しかし、宇宙誕生からわずか数億年という短い期間で、太陽の10億倍級の質量にまで成長するには、かなり効率的な成長過程が必要になります。
最初から比較的大きなブラックホールの「種」が生まれていたのかもしれません。
あるいは、初期宇宙ではガスが非常に豊富で、ブラックホールが現在よりも急速に成長しやすい環境だったのかもしれません。
また、銀河の形成とブラックホールの成長が、私たちが考えている以上に早い段階から深く結びついていた可能性もあります。

今回の31個の天体の新発見は、こうした仮説を検証するための貴重な観測材料になります。
これまで数が少なかった赤方偏移7以上のクエーサーが増えたことで、最古級のブラックホールを「珍しい例外」として見るだけでなく、集団として調べる道が開けてきたのです。
今後、さらに遠く、さらに古いクエーサーが見つかれば、宇宙で最初の巨大ブラックホールがいつ現れたのかに、より近づける可能性があります。
宇宙の始まりからわずか数億年後に輝いていたクエーサーは、遠い過去から届いた光の化石です。
その光を読み解くことは、宇宙が銀河を作り、星を作り、そして巨大ブラックホールを育ててきた歴史を読み解くことでもあります。
今回の発見は、宇宙の夜明けに開いた小さな窓です。
その先には、まだ私たちが知らない巨大ブラックホール誕生の物語が広がっています。





















島袋隼士 ブルーバックス「宇宙暗黒時代の夜明け」を市立図書館で借りてました
「宇宙初期の超巨大ブラックホールは、21cm波が観測できれば解ける」と豪語しています。
遠い未来の夢物語のような・・・
TON618じゃね?
インフレーション時代に生じた宇宙の密度揺らぎによって原始ブラックホールが生まれたと考えられており、原始ブラックホールの質量はピンキリ以上に広い質量範囲に亘っていたと考えられるから、もし原始ブラックホールの中でも特に大きなものが巨大ブラックホール級の質量を持っていたとすれば、最古の巨大ブラックホールはビッグバンとほぼ同時に生まれた…という可能性も考えられる。