水生生物から陸上生物への移行には、両生類のような変態は必要なかった
水生生物から陸上生物への移行には、両生類のような変態は必要なかった / Illustration by Berit Goding.
biology

水生生物から陸上生物への移行には、両生類のような変態は必要なかった

2026.06.19 23:45:39 Friday

アメリカのフィールド自然史博物館(FMNH)の研究によって、水生動物が陸上に進出する時期に生きていた初期の四足動物たちは、カエルのようなオタマジャクシの時代を経る変身(変態)を経験していませんでした。

およそ3億年前の”赤ちゃんの化石”から、彼らが生まれたときにはすでに成体と共通する体の設計を備え、そのまま育っていくタイプだったことがわかったのです。

これはつまり、両生類のような変態は、四足動物のはじめから備わっていた”標準の育ち方”ではなかった、ということになります。

変態という「水中の子ども時代から、陸の大人へ」という体の作り替えがなかったのだとしたら、いったい何が、生き物を陸へと運んだのでしょうか?

研究内容の詳細は2026年6月18日に『Science』にて発表されました。

Fossilized babies of ancient crocodile-like predators uproot scientists’ understanding of how animals adapted to the land https://www.fieldmuseum.org/about/press/fossilized-babies-of-ancient-crocodile-like-predators-uproot-scientists-understan?utm_source=chatgpt.com
Direct development of stem tetrapods across the fin-to-limb transition https://doi.org/10.1126/science.aeb7635

私たちがイメージする「進化の階段」

画像

長いあいだ、私たちはこんな進化のイメージを教わってきました。

海にいた魚の一部がカエルのような両生類になり、両生類の一部がトカゲのような爬虫類になり、やがて哺乳類が生まれ、最後に私たちへ——。

一段ずつ階段をのぼっていくような、すっきりとした物語です。

その階段のいちばんの難所が、「水から陸へ」という上陸でした。

そして、初期の四足動物は、いまのカエルやサンショウウオとそっくりな育ち方をしたはずだ、と考えられてきました。

つまり、子どものうちは水中で息をするエラを持つ”オタマジャクシ”のような姿で過ごし、大人になるときに体を一気に作り替える——エラを失い、肺をふくらませ、新しい手足を手に入れて、陸へ上がる、というわけです。

この体の大改造を、変態と呼びます。

そして長いあいだ、「この変態こそが、生き物を水から陸へと運んだ”橋”だったのだ」という有力な仮説がありました。

なぜ、そう考えるのが自然だったのでしょう。

理由のひとつは、初期の四足動物にいちばん姿が似た現生の動物が、ほかでもないサンショウウオ——変態する両生類——だったからです。

「これほど似ているのだから、育ち方もきっと似ていたのだろう」。そう考えるのは、ごく自然なことでした。

ところが、ここで素朴な疑問がわいてきます。

「初期の四足動物はオタマジャクシのようだった」と、これほど長く信じられてきたのなら、その証拠になる”オタマジャクシのような赤ちゃんの化石”が、たくさん見つかっていてもよさそうなものです。

しかし、そうではありませんでした。

生まれたての赤ちゃんは、化石としてほとんど残らないのです。

体が小さく、骨格の一部はまだやわらかい軟骨でできていて、死ぬとあっという間に分解されてしまうからです。

そのため「子ども時代は水中、大人になれば陸上」という両生類型のイメージは、長いあいだ、肝心の証拠がないまま語り継がれてきました。

転機は、いまから約10年前に訪れます。

当時まだ博士課程の大学院生だったマン氏は、四足動物担当の学芸員ジョン・ボルト氏から、ある不思議な化石を見せてもらいました。

米イリノイ州のメイゾン・クリークという、軟らかい体まで残る奇跡の産地から出た、ごく小さな生き物です。

その正体は、しばらく誰にも分かりませんでした。骨格の形を手がかりにしながら、走査型電子顕微鏡で細部まで確かめていくと、ようやく姿が見えてきます。

エンボロメアという絶滅動物の、生まれたばかりの赤ちゃんだったのです。

成体のエンボロメアは、体長2〜3メートルにもなる巨大な生き物でした。

たとえるなら、ワニとウナギを混ぜたような姿の、水辺の王者です。

大森林が栄えた石炭紀(およそ3億年前)の湖や沼で、食物連鎖の頂点に君臨していました。

ところが生まれたばかりのときは、体長わずか1〜2センチメートル。

10円玉ほどの小ささから、3メートルの巨体へ。じつに100倍以上も成長する生き物だったのです。

次ページ赤ちゃんの化石が語った、決定的な証拠

<

1

2

3

4

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

スマホ用品

生物学のニュースbiology news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!