赤ちゃんの化石が語った、決定的な証拠

では、この赤ちゃんの化石は、いったい何を語っていたのでしょうか。
もし教科書の仮説が正しいなら——つまり、初期の四足動物がカエルやサンショウウオのように育ったのなら——この赤ちゃんの体には、ある特徴が残っているはずでした。サンショウウオの幼生がもつ、外鰓(がいさい)です。
外鰓とは、頭の横からふさふさと突き出た、羽根のような形のエラのこと。
水中で息をするための器官で、サンショウウオ型の水生幼生によく見られ、変態のときに体へと吸収されていきます(外鰓そのものが肺に変わるわけではなく、入れ替わるように肺が呼吸を担っていきます)。
いわば外鰓は、「オタマジャクシ的な子ども時代を過ごした証拠」として化石に残るはずの、わかりやすい目印なのです。
ところが——。
エンボロメアの赤ちゃんの化石に、外鰓の痕跡は、まったくありませんでした。
さらに頭の骨には、成体と共通する重要な骨が、孵化してまもないのに少しずつ骨へと変わりはじめていました。
お腹には、卵の中で蓄えていた栄養(卵黄)がたっぷり残っていて、これは餌を食べはじめる前の、本当に生まれたての個体である証拠です。
さらにこの赤ちゃんには、小さな前足も備わっていました。
劇的な作り替え(変態)の痕跡はどこにもなく、生まれたときから成体と共通する設計を、少しずつ完成させながら育っていた過程が取れたのです。
これが、変態を経ない育ち方(直接発生)を支える証拠でした。
とはいえ、エンボロメアだけの結果では、「たまたまこの種が特殊だっただけでは?」と言われかねません。
そこで研究者たちは同じ時代・同じ場所に生きていた、別の2グループの動物の赤ちゃんも調べたのです。
しかもこの3グループは、魚に近いもの、足を持つもの、いったん得た足を失ったものと、「水から陸へ」の道のりのさまざまな段階を代表する、いわばバラバラの顔ぶれでした。
結果は、どれも同じ。
一時的な幼生の器官はなく、変態を経た形跡もまったく見あたりません。
パルド氏は「魚から四足動物への進化の道のりにおいて、さまざまな系統を代表する多くの種を調べましたが、そのどれもが、オタマジャクシに少しでも似た特徴を持っていませんでした。オタマジャクシがいなければ、変態もありません」とべています。
こうして、証拠はそろいました。鰭(ヒレ)から四肢への移行をまたぐ初期の四足動物たちは、オタマジャクシのような一時的な幼生期も、劇的な変態も経ていなかった。
卵から出たときには、すでに成体と共通する体の設計を備えて、生まれていたのです。






























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