あの渦巻きは、ただの排泄物ではなかった

ところで、ラグワームの糞は、なぜ、崩れにくい頑丈な渦巻きの塔になっているのでしょうか。
研究チームによれば、このしっかり巻かれたらせん構造は、潮が満ちて海水に浸かっても、波で砂がかき混ぜられても、その形をしぶとく保ち続けるといいます。
そしてこの形が、巣穴の入り口が砂で詰まったり、崩れたりするのを防いでいると考えられています。
美しいだけではない。ラグワームの暮らしを、静かに守る「ふた」の役目も果たしている、というわけです。
じつは「うんちの物理」を大まじめに研究したのは、この一本が初めてではありません。
2017年には別の研究チームが「排便の流体力学」を調べ、ネコからゾウまでの哺乳類では、体の大きさが違っても、用を足す時間がおよそ12秒前後にそろうことを示しました。今回の論文も、その研究をきちんと引用しています。
“うんち”の物理は、地味ながら脈々と受け継がれる、立派な研究分野なのです。
そのダーウィンが、結局解けなかった謎——「なぜ、ミミズのフンはあの形になるのか」。
それから140年以上の時が流れ、謎はひとつの物理で説明されました。
もしダーウィンがこの論文を読むことができたなら、生きものの営みの奥に物理法則がひそんでいたことに、きっと感激したことでしょう。


































うんちのような柔らかい物質(ソフトマテリアル)は、力学モデルとしては粘弾性体とするのが妥当だと思うけど、今回適用されたとぐろ巻き(コイリング)の式にはなぜ粘性成分はなく、弾性成分だけなのだろう?一方、弾性成分がない純粋な粘性流体でも柱状流になっているとき、もし粘度が十分大きくて圧縮応力がかかると座屈するので、とぐろを巻くことができると理解している。(とぐろを巻く現象は弾性体、粘弾性体に限らない)