水中で最大3時間の活動が可能に
では、この潜水スーツは実際にどれほど効果があったのでしょうか。
実験では、1.0mLの3%過酸化水素水を使うことで、酸素発生量は6.2±0.2mLに達しました。
スーツ内の酸素濃度は注入から約8分後に47.4±14.2%まで上昇し、3時間後でも14.8±3.4%を維持しました。
一方、酸素発生器がない場合、スーツ内の酸素濃度は1時間で6.2±2.7%まで低下しました。
実際の水中試験でも、違いは明確でした。
潜水スーツを装着したサイボーグ昆虫は、水中で2〜3時間にわたり外部刺激に反応し、移動を続けることができました。
これに対し、スーツを装着していないゴキブリは、水中で約2分以内に窒息しました。
【潜水スーツの仕組みの説明画像がこちら】
また、運動能力も保たれていました。
陸上での平均前進速度は87.5mm/s、水中では78.4mm/sでした。
水中では流体抵抗の影響で旋回速度が低下しましたが、それでも3時間後まで前進や旋回の動きは維持されました。
さらにチームは、実際の災害現場を想定した実験も行っています。
長さ1.7m、断面5cm四方のトンネルを作り、その中にCO₂で満たされた区間と水没区間を連続して配置。
スーツなしのサイボーグ昆虫は、CO₂や水中で反応を失いました。
しかし潜水スーツを装着した個体は、3回すべての試行でCO₂区間と水没区間を通過しました。
また、外付けの装置が狭い隙間に引っかかる問題に対しては、バックパックとバッテリーを体内に埋め込む構成も試されました。
この完全埋め込み型のサイボーグ昆虫は、水中にある高さ2cmの狭い隙間を通過できました。
この成果は、サイボーグ昆虫の活動範囲を「陸上」から「水中」や「低酸素環境」へ広げるものです。
洪水後のがれき、排水管、下水道、地下トンネルなど、従来の小型ロボットでも入りにくい場所で、将来的に人命探索やインフラ点検に役立つ可能性があります。
ただし、すぐに現場投入できる段階ではありません。
泥、水流、複雑ながれき、長距離移動、通信、位置推定、センサー搭載など、実用化に向けて解決すべき課題はまだ残っています。
それでも今回の研究は、昆虫の身体能力と人工装置を組み合わせることで、従来のロボットとは違う探索手段を生み出せることを示しています。
小さなゴキブリ用の潜水スーツは、未来の災害現場で、人間がたどり着けない場所へ最初に向かう「小さな調査員」になるかもしれません



























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