見えない脱水を知らせるウェアラブルセンサーを開発
人間の体の約60%は水分でできています。
水分は体温調節、血液循環、老廃物の排出、筋肉の動き、脳の働きなど、生命維持に欠かせない機能を支えています。
しかし、喉の渇きは“遅れてやってくる警告”に過ぎません。
すでに体内の水分が減ってから発生する感覚であり、「渇きを感じたときにはすでに軽度の脱水が始まっている」と考えるべきでしょう。
軽度の脱水でも、集中力の低下や疲労感、頭痛などを引き起こします。
中度から重度になると、めまい、低血圧、錯乱、最悪の場合は熱中症やショック状態に陥ることさえあります。
それにも関わらず、脱水状態を客観的に判断するのは非常に困難です。
従来の方法である尿検査や血液検査は、医療機関に行かないと実施できませんし、頻繁に行うには不便すぎます。

そこで研究チームは、体内の水分量を、いつでも・どこでも・手軽に測定できる方法の開発に乗り出しました。
着目したのが、生体インピーダンス法という技術です。
これは、体にごく微弱な電流を流し、組織の電気抵抗(インピーダンス)を測定するというものです。
ここで重要なのは、水は電気を通しやすいという性質です。
体内の水分が多ければ電流はスムーズに流れますが、水分が不足すると、組織の電気抵抗が高くなる傾向があります。
つまり、組織の電気の流れにくさを測定すれば、体の水分状態がわかるというわけです。
研究チームが開発したセンサーは、二の腕に貼り付けるタイプの小型軽量な装置で、バッテリー駆動となっています。
センサーが微弱な電流を腕に流し、その流れにくさ(インピーダンス)を測定します。
測定データは無線通信によってスマホに送信され、リアルタイムで水分状態がアプリに表示される仕組みです。
このセンサーの利点は、体を傷つけない非侵襲的な構造でありながら、連続的な測定が可能であることです。
ユーザーが何をしていても、水分状態を常にモニタリングできるという点で、これまでの水分管理手段を大きく上回っています。