月の裏側サンプルに潜んでいた「水の運び屋」
中国国家航天局(CNSA)の嫦娥6号が世界で初めて、月の裏側に位置する南極エイトケン盆地内の「アポロ・ベイスン」と呼ばれるクレーターからサンプルを持ち帰りました。
この地域は月面の約4分の1を覆う巨大な盆地で、太古の衝突の痕跡が集中しています。
回収されたサンプルには5000個以上の微小な破片が含まれており、研究者たちはこれらを一つひとつ分析。
特に着目したのは「カンラン石(オリビン)」と呼ばれる鉱物です。
オリビンは火山岩や隕石に多く含まれるため、衝突の痕跡や外来物質の証拠としても重要な手がかりとなります。
そして今回、月面サンプルから発見されたのは「CIコンドライト(イヴナ型炭素質隕石)」と呼ばれる炭素質隕石由来の微小な塵。
このCIコンドライトは、地球上で発見される隕石の1%未満という超レアな存在です。
特徴はとにかく「壊れやすい」こと。
スポンジのように多孔質で、全体重量の最大20%が水和鉱物として結びついた、いわば「水分の豊富な石」なのです。
地球では、大気圏に突入した時点でほとんどが崩れ去ってしまうため、まず残ることがありません。
それがなぜ、空気もない月面で保存されていたのでしょうか?