12年ごとに明滅する光源の正体とは?
今回の観測対象となったのは、地球から約50億光年彼方にある活動銀河核「OJ 287」です。
この天体が天文学者の注目を集める理由は、約12年ごとに“ものすごい明るさの大フレア”を繰り返すという、不思議な周期パターンにあります。
この周期的な明るさの変化は、まるで宇宙の灯台が光をパッと照らすように訪れ、100年以上も前から世界中の望遠鏡や写真乾板に記録されてきました。
では、なぜOJ 287は12年ごとに強烈な輝きを放つのでしょうか?
その謎に最初に迫ったのは、1980年代のフィンランド・トゥルク大学の若き天文学者たちでした。
彼らは「もし銀河核の中心にブラックホールが2つあって、それらが互いの周りを公転しているなら、接近のたびに周囲のガスがかき乱され、巨大な閃光が生まれるのでは?」と予測したのです。
このモデルでは、「主役」の超大質量ブラックホール(太陽の180億倍)と、その周りを回る「相棒」のやや小さいブラックホール(太陽の1.5億倍)が12年かけて壮大な軌道ダンスを繰り広げています。
実際、光度変化のタイミングは理論計算とピタリ一致し、最新の観測では予測どおりの“宇宙花火”も捉えられました。
けれども、ブラックホールは「真っ暗闇」です。
その本体を直接撮ることはできません。
そこで天文学者たちは、ブラックホールから噴き出す「ジェット」と呼ばれる超高速の粒子流を追いかけることで、その位置や動きを間接的に探る方法を編み出しました。