2つのブラックホールが見えた!
それでも、ブラックホール同士が重なって見えたり、ジェットの方向が複雑にねじれていたりと、「2つ」を画像として分離して捉えるのは“ほぼ不可能”だと思われてきました。
この壁を打ち破ったのが、ロシアの宇宙電波望遠鏡「RadioAstron」と、地上の巨大アンテナを連携させた“地球スケール”の電波干渉計技術です。
チームはこれらの観測システムを駆使して、史上最高の解像度でOJ 287の中心を撮影し、1つの点にしか見えなかったはずの中心部に“2つの明るいジェット源”を発見しました。
解析の結果、片方は予想通り「主ブラックホール」から出ているジェット。
そしてもう片方は、公転する「相棒ブラックホール」から噴き出すジェットであることが判明したのです。
【観測されたブラックホールペアの画像がこちら】
このジェットは、相棒ブラックホールが動くことで進行方向が次々と変わり、理論計算どおり“尻尾を振るような軌跡”を描いていました。
さらに、相棒ブラックホールのジェットは主ブラックホールに比べて、
・スピードが遅い(秒速で見ても1/4程度)
・磁場が強い
・明るさのピークがより高い周波数にある
という特徴もピッタリ理論と一致していました。
これにより「2つのブラックホールが互いの周りを回り、しかも両方からジェットが噴き出している」というモデルが、観測画像で初めて実証されたのです。
チームは今後、さらなる高解像度での電波観測や新しい望遠鏡によって、2つのブラックホールの詳細を明らかにしていく予定です。
宇宙現象の解明は日常生活には全く関係ない。人間の好奇心のみが原動力です。しかしながら、人類を考える葦とパスカルが述べたように、食べて寝るだけでは人間は満足しない。好奇心や新しいチャレンジこそ生きる力となります。