「宇宙を倉庫に」――Arcが目指す新時代の物流
これまで人類は、“必要な物資をできるだけ速く現場に届ける”ためにあらゆる手段を模索してきました。
特に軍事や人道支援、災害対応の分野では、時間との勝負が命運を分けることもしばしばです。
しかし、地上の輸送インフラが寸断されたり、敵勢力がアクセスを妨害したり、そもそも道や空港すら存在しない極地や無人島となると、物資輸送は一気に困難を極めます。
Arc計画は、こうした限界を一気に飛び越える“抜け道”を宇宙に求めています。
Arcは、最大225キログラムの物資を積載できる再利用型の小型宇宙カプセルです。
これらのカプセルを地球低軌道(LEO)にあらかじめ複数配備し、地球を高速で周回させておくのです。
そして必要なとき、地上から指令が飛べば、Arcは軌道上のサービスモジュール(母船)から切り離され、大気圏へ自動的に再突入。
パラシュートを開いて減速し、指定した地域へピンポイントで着地します。
その時間、わずか1時間以内というのだから驚きです。
「宇宙そのものを“地上のどこへでも即応できる巨大な倉庫”にする」
これがArcの本質です。
アクセスに限界が生じる地上とは異なり、宇宙からなら地球全域を“見下ろす”ことができます。
Arcカプセルの数を増やせば増やすほど「どこでも即時に対応」が現実味を帯びてくるでしょう。
また、Arcは単なる物流カプセルではありません。
米国などが強い関心を寄せているのは、極超音速(ハイパーソニック)飛行のテストプラットフォームや、宇宙からの精密投下技術の実証にもなりうるという点です。
Arcの母体となった「Ray」カプセルは2025年1月に初飛行を成功させており、Arcはその発展型として、今後は自律運用・再利用・低コストを実現する「軌道上物流ネットワーク」の主役を目指しています。
とはいえ、こうした理想を求めた構想だけでなく、現実にも目を向けなければいけません。