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宇宙を倉庫にして、どんな場所にも物資を投下する「アーク」計画。※イメージ / Credit:Canva
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”宇宙倉庫”計画「アーク」、どこにでも1時間以内に物資投下する

2025.10.16 20:00:20 Thursday

災害や紛争の影響下、孤立した島、山岳地帯など、従来の「空輸」や「車両輸送」では絶対にすぐ物資が届かない場所があります。

そんな“絶望的なアクセス困難地”へ、わずか1時間以内で救援物資や重要装備を届けるという、まるでSFのような計画が現実に動き始めています。

アメリカの宇宙ベンチャー「Inversion」が提案するのは、宇宙空間を“巨大な倉庫”として利用し、軌道上から地球上のあらゆる場所に即座に物資を投下できる「Arc(アーク)」という再利用型宇宙カプセルによる新たな物流インフラです。

Space-based transports would act as hypersonic emergency supply drops https://newatlas.com/military/arc-orbital-supply-craft-emergency/ Arc https://www.inversionspace.com/arc

「宇宙を倉庫に」――Arcが目指す新時代の物流

これまで人類は、“必要な物資をできるだけ速く現場に届ける”ためにあらゆる手段を模索してきました。

特に軍事や人道支援、災害対応の分野では、時間との勝負が命運を分けることもしばしばです。

しかし、地上の輸送インフラが寸断されたり、敵勢力がアクセスを妨害したり、そもそも道や空港すら存在しない極地や無人島となると、物資輸送は一気に困難を極めます。

Arc計画は、こうした限界を一気に飛び越える“抜け道”を宇宙に求めています。

Arcは、最大225キログラムの物資を積載できる再利用型の小型宇宙カプセルです。

これらのカプセルを地球低軌道(LEO)にあらかじめ複数配備し、地球を高速で周回させておくのです。

そして必要なとき、地上から指令が飛べば、Arcは軌道上のサービスモジュール(母船)から切り離され、大気圏へ自動的に再突入。

パラシュートを開いて減速し、指定した地域へピンポイントで着地します。

その時間、わずか1時間以内というのだから驚きです。

「宇宙そのものを“地上のどこへでも即応できる巨大な倉庫”にする」

これがArcの本質です。

アクセスに限界が生じる地上とは異なり、宇宙からなら地球全域を“見下ろす”ことができます。

Arcカプセルの数を増やせば増やすほど「どこでも即時に対応」が現実味を帯びてくるでしょう。

また、Arcは単なる物流カプセルではありません。

米国などが強い関心を寄せているのは、極超音速(ハイパーソニック)飛行のテストプラットフォームや、宇宙からの精密投下技術の実証にもなりうるという点です。

Arcの母体となった「Ray」カプセルは2025年1月に初飛行を成功させており、Arcはその発展型として、今後は自律運用・再利用・低コストを実現する「軌道上物流ネットワーク」の主役を目指しています。

とはいえ、こうした理想を求めた構想だけでなく、現実にも目を向けなければいけません。

次ページArcが挑む「現実の壁」

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