思春期の脳は再編成されていた
人間の脳は、10代を終えた時点で完全に成熟するわけではありません。
判断や感情の調整に関係する変化は、20代半ばから後半まで続くと考えられています。
一方、思春期から若年成人期にかけて、過去の出来事を思い出す回路がどのように成熟するのかは、十分に分かっていませんでした。
そこで研究チームは、マウスの「脳梁膨大後部皮質(retrosplenial cortex,RSPまたはRSC)」に注目しました。
RSPは、出来事が「どこで、どのような状況で起きたのか」という情報を含む長期記憶を呼び出す際に重要な脳領域です。
研究チームが特に調べたのは、一部の神経細胞を網目状に包む「ペリニューロナルネット(PNN)」です。
PNNは神経細胞同士のつながりを安定させ、既に作られた記憶回路を守る補強材のような働きを持っています。
そして研究では、生後21日から75日までの雌雄のマウスを使い、RSPや海馬などに存在するPNNの量を比較しました。
さらに、マウスに特定の箱と短い電気刺激を結び付けて覚えさせました。
マウスがその場所を覚えていれば、後に同じ箱へ戻されたとき、恐怖から動きを止める「すくみ反応」を示します。
その結果、RSPでは思春期初期に多く存在したPNNが、思春期後期に大きく減少しました。
背側海馬ではPNNが安定または増加していたため、脳全体で一様に起きた変化ではありません。
また、思春期初期に作られた記憶は後に呼び出しにくくなった一方、生後75日に新しく作られた記憶は、その後も安定して維持されました。
では、PNNの減少と記憶の変化には、どのような関係があったのでしょうか。
より詳しい結果を次項で見ていきます。





























