寝不足になると「運動や身体感覚に関わるネットワーク」の結びつきが変わる
解析で特に目立ったのが、体の動きや身体感覚に関係する「体性運動ネットワーク(somatomotor network)」です。
睡眠時間が短い子どもでは、このネットワーク内部の結びつきが強い傾向がみられました。
一方、目から入った情報の処理に関わる「視覚ネットワーク」では、内部の結びつきが弱くなっていました。
体性運動ネットワークという名前からは、単に手足を動かすための脳回路を想像するかもしれません。
しかし近年、このネットワークは運動だけでなく、行動を計画し、それを目的に沿った行動へつなげる働きにも関係すると考えられています。
そのため今回の結果は、なぜ睡眠不足が思考や行動に影響するのかを考える手がかりになる可能性があります。
さらに研究チームは、「もともとこのような脳だから睡眠時間が短いだけ」という可能性を検討するため、別の睡眠実験にも目を向けました。
使用したのは、成人76人が通常通り眠った後と、睡眠を3時間に制限した後の両方でfMRIを受けた「Stockholm Sleep Brain Study」のデータです。
子ども2991人から見つけた短時間睡眠の脳パターンをこれら成人に当てはめると、同じ参加者でも通常睡眠後より睡眠制限後の方が、そのパターンが強く現れました。
さらに成人の睡眠不足データだけから作った脳パターンと、子どもの短時間睡眠パターンを比較すると、脳内で変化する場所の分布にも有意な共通性がみられました。
とりわけ両者に共通していたのが、体性運動ネットワーク内部の結びつきが強まることでした。
この結果は、脳の特徴が睡眠時間を左右するだけでなく、睡眠不足そのものが脳のつながり方を変える方向も存在する可能性を支持します。
ただし、子どもたちに対して睡眠不足を実験的に起こして2年間追跡したわけではないため、因果関係が完全に証明されたわけではありません。
また、睡眠時間は日ごとや週ごとにも変動しますが、今回の縦断データではそうした細かな変化を十分に捉えられていないという限界もあります。
それでも、大規模な子どもの追跡データと、成人を実際に睡眠不足にした実験の両方が似た方向を示したことは重要です。
思春期の睡眠時間は、単に翌日の眠気だけでなく、発達途中の脳がどのように情報をやり取りするかにも関係しているようです。
































