サイコパス傾向は嘘への寛容さと結びついていた

この研究がユニークなのは、ここから調べる対象が入れ替わる点です。
嘘の中身ではなく、それを読んでいる人間のほうに焦点が移ります。
調査では、6種類の嘘の許容度に加え、参加者の性格傾向も測定されていました。
対象となったのは、心理学で「暗い四性格」(ダークテトラッド)と呼ばれる4つの特徴です。
自分を特別視する自己愛、他人を計算ずくで操る傾向、他者の苦痛を楽しむ傾向、そしてサイコパス的傾向の4つで、いずれも、自分の利益のために相手を動かす行動と結びつきやすい性格として研究されてきました。
このうちサイコパス的傾向とは、衝動性が高く、スリルを求め、他者への共感が薄いという特性を指します。
そして4つの中で、嘘への寛容さと最も一貫して結びついたのが、このサイコパス的傾向でした。
サイコパス的傾向は7点から35点の範囲で測られ、796人の平均は14.66点でした。
この点数が平均より4点ほど高い人は、統計モデル上では、性別のなりすましを「許せない」と断じない側に回る比率が約1.4倍、既婚隠しでも約1.25倍になる計算です。
なぜ4つのうちこの1つだけが浮かび上がったのか。
鍵は、有意な関連が出た2つの嘘が、どちらも「騙される側の痛み」を軽く見ないと成立しないものだった点にあります。
性別のなりすましは、恋愛のためではなく退屈しのぎで相手を信じ込ませて楽しむ行為でした。
既婚隠しは、相手の時間と将来を賭けさせる嘘です。
実際、デートアプリで相手をからかう行動や不貞行為とサイコパス的傾向の結びつきは、先行研究でも繰り返し示されてきました。
さらに踏み込んだ分析では、そもそも嘘を強く拒絶しなかった参加者の中でも、この傾向が強い人ほど、年齢、容姿、交際状況の嘘を相対的に受け入れやすいと評価していたことが分かっています。
たとえば他人の写真を使う容姿の偽装では、サイコパス的傾向が4点ほど高いと、許容度は1割ほど高くなる計算です。
年齢と交際状況の嘘でも、同じ向きの関連が確認されています。
つまりサイコパス的傾向は、嘘を切り捨てない側に立つかどうかだけでなく、その先の甘さの度合いにも関わっていたことになります。
線をまたぐかどうかと、またいだ先でどこまで進むかの両方に、同じ性格が顔を出していたわけです。
一方、残りの3つの暗い性格はサイコパス的傾向ほど一貫した関連は示しませんでした。
他人を計算ずくで操る傾向にいたっては、ごくわずかながら、むしろ年齢の嘘を許しにくい方向に働いていたほどです。
12歳のサバ読みは、一度会えばほぼ確実に露見するうえ、発覚したときに失うものが大きい嘘です。
研究者はこれについて、バレるリスクの高い嘘の「戦略的なコスパの悪さ」を計算できる性格ゆえの反応ではないか、と考察しています。
これまで嘘をつく側の性格を調べた先行研究は複数ありますが、オンラインデートの嘘を評価する側の性格をサイコパスなど暗い性格の枠組みで検証した研究は、今回が初めてです。
































