脳は単一の起源を持つ臓器なのか?

人体図鑑に描かれる脳は、しわの寄ったひとかたまりの臓器です。
けれどもその中身は、役割の違う部分がひと続きにつながってできています。
脳の前側(前脳と中脳)には、言葉や意識、物事を抽象的に考える働きを担う領域があります。
一方、頭蓋骨の後ろの付け根にある後ろ側(後脳)は、脳幹と呼ばれる部分の大半を占め、呼吸や睡眠、心臓の拍動や空腹感の調節など、私たちを生かしておくための「自動運転」を受け持っています。
この3つの部分は、頭の中で切れ目なくつながっています。
そのため科学者たちは長い間、脳全体は1種類の万能な「脳の種(もとになる細胞)」から育つと考えてきました。
1952年には、オランダの発生学者ニューコープが、脳の種は前脳にも中脳にも後脳にもなれる幅広い力を持つと提唱しています。
万能な種が胎児の体の前後に広がり、置かれた場所ごとに「ここは前脳に」「ここは後脳に」という指示を受けて作り分けられていく、というイメージです。
実際、胎児の中で場所的に前寄りにある細胞が前脳に、後ろ寄りにある細胞が後脳になることは、以前から知られていました。
しかしそれが「置かれた場所の指示に従っただけ」なのか、「種そのものが最初から別物」なのかは、胎児を外から観察するだけでは区別できませんでした。
そこで研究チームは、脳の種がいつ、どのように分かれるのかを、胎児の発生のいちばん早い段階までさかのぼって調べることにしました。





























