マウスの大脳皮質の9割以上を「ヒトの脳組織」に置き換えることに成功
マウスの大脳皮質の9割以上を「ヒトの脳組織」に置き換えることに成功 / Credit:Developmental xenocortication using human-derived organoids in mice
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マウスの大脳皮質の9割以上を「ヒトの脳組織」に置き換えることに成功

2026.09.19 17:00:19 Saturday

アメリカのスタンフォード大学(Stanford University)などで行われた研究によって、生まれつき大脳皮質をほとんど持たないマウスにヒトの脳組織を移植すると、3か月後にはそのマウスの皮質組織の体積の9割以上がヒト由来の組織で占められることが明らかになりました。

ヒトの神経細胞はマウスの神経系とつながって電気の波を起こし、一部は首の高さの脊髄にまで突起を伸ばしていました。

しかもこの組織には、培養皿ではどうしても作れなかった大型の神経細胞によく似た細胞まで現れていたのです。

研究チームは「これらの動物モデルは、ヒトの脳回路に生じた病気に関わる変化が、まるごとの神経系の中でどう表れるのかを調べる、またとない機会をもたらします」と述べています。

では、大脳皮質をヒトの細胞に明け渡したマウスは、いったいどんな変化が起きたのでしょうか?

研究内容の詳細は2026年9月16日に『Nature』にて発表されました。

Developmental xenocortication using human-derived organoids in mice https://doi.org/10.1038/s41586-026-11032-2

ヒトの脳を調べるとき、最大の壁になるのはヒト自身

ヒトの脳を調べるとき、最大の壁になるのはヒト自身
ヒトの脳を調べるとき、最大の壁になるのはヒト自身 / Credit:Canva

人間のがどう作られ、どこでつまずくと病気になるのか。

それを知るうえで最大の障害になっているのは、その脳を使っている人間自身です。

本人が生きて暮らしている以上、頭を開けて中身をいじるわけにはいきません。

統合失調症やてんかん、自閉症のように、生まれる前や生まれた直後の配線の乱れが関わるとされる病気ほど、この壁は高くなります。

そこで研究者たちは、脳を体の外で育てる道を選びました。

ヒトの皮膚の細胞を幹細胞に変え、そこから育てた小さな立体の脳組織は「オルガノイド」と呼ばれ、いまでは発達中のヒトの神経系にある幅広い細胞がそろいます。

けれども、皿の中の脳には決定的に欠けているものがあります。

脳が本来つながっている体です。

血液は届かず、目や耳から入る情報もなく、動かすべき筋肉もありません。

この壁を破るため、スタンフォード大学のセルジュ・パシュカ氏らは2022年、ヒトの大脳皮質オルガノイドを生まれたばかりのラットの脳に移植しました。

移植されたヒトの神経細胞は、皿の中に残った同じ組織よりも大きく育ち、枝を複雑に伸ばし、ラットのヒゲに触れた感覚にまで反応するようになりました。

それでも、ヒトの組織が広がれたのは、ラットの片側の大脳皮質の3分の1まででした。

理由は、場所の取り合いです。

ラットの脳には、もともとラット自身の大脳皮質が詰まっています。

移植されたヒトの細胞は、その隙間に割り込む形で育つしかありません。

しかも割り込む側と受け入れる側とでは、育つ速さがまるで違います。

げっ歯類の神経細胞は回路をすばやく組み上げますが、ヒトの神経細胞が同じところまで育つには、ずっと長い時間がかかります。

ゆっくり育つ側が枝を伸ばそうとするころには、速く育った側がすでに枝を張りめぐらせ、つなぐ相手も置き場所も埋めてしまっているのです。

家具がぎっしり置かれた部屋に、あとから荷物を運び込むようなものです。

置ける場所は、隅にしか残っていません。

そこで研究チームは、発想を裏返しました。

ヒトの細胞のために部屋を広げるのではなく、最初から家具を運び込まないことにしたのです。

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