男女で微妙に異なる「嘘の見え方」

性格に加え、性別による温度差も確認されています。
最も差が開いたのは、既婚者が「独身」を装うシナリオでした。
この嘘を「許せない」と答えたのは、概算で、女性が約86%、男性では約71%。
15ポイント近い開きがありました。
興味深いのは、既婚隠しに限っては、サイコパス的傾向よりも「男性であること」のほうが大きく効いていた点です。
この項目については、サイコパス的傾向の高さと「男性であること」の両方が、強く拒否しない側に回ることと結びついていましたが、統計モデル上の係数は男性であることのほうが大きく出ていました。
経済力の嘘でも「許せない」と答えた女性は概算で約77%に対し男性は約65%、年齢の嘘でも女性約85%に対し男性約79%と、いずれも男性のほうが判定を緩めていました。
進化心理学の観点からは、短期的な交際機会を求めやすい男性にとって、既婚を隠す嘘が出会いの入口を広げる手段として理解しやすかった可能性が指摘されています。
つまり男性参加者は、この嘘を「相手を出し抜くための悪意」というより、競争の激しい恋愛市場で自分を売り込むための方便として読み取りやすかったのかもしれません。
さらに、嘘をついたのが誰かによっても評価は揺れました。
女性の参加者は、嘘の主が女性だった場合に限り、年齢と交際状況の嘘を僅かに甘く評価しています。
研究者は、若さや「フリーであること」が女性の魅力シグナルと見なされやすいため、女性参加者がそれを受け入れがたい欺瞞というより魅力を高めるための戦略として読んだ可能性を挙げています。
同じ女性だからこそ、その嘘が「ずるさ」ではなく「生き残るための工夫」に見えたのかもしれません。
もっとも、今回の研究には限界もあります。
まず、今回測られたのは臨床的な診断ではなく、質問紙で測ったサイコパス的傾向の強さです。
誰かが「サイコパス」と診断されたわけではありません。
また研究で使われたシナリオは架空のものであり、自己申告による回答である以上、実際に嘘をついたり許したりする行動と一致するとは限りません。
それでも今回の研究は、嘘への寛容さについて一つの見方を残してくれます。
体重を実際より18キロ少なく書くくらいなら、多くの人は目くじらを立てませんでした。
しかしサイコパス的傾向が高い人ほど、性別のなりすましや既婚隠しといった嘘まで、強く拒否しない側に回りやすい——796人の回答が示した線引きは、嘘の中身だけで決まるものではなかったのです。
































