AIは「寝てない走り」を見抜ける

研究チームは記録したデータをAI(機械学習)に学習させ、同じ人の走行データを並べて「どちらが徹夜明けの走りか」を当てさせるテストを行いました。
結果は驚くべきものでした。
腰につけた市販センサー1つのデータだけで、AIは最大85%の精度で徹夜明けの走りを言い当てたのです。
さらに意外だったのは、機材同士の勝負の行方です。
研究室に据えられた13台の赤外線カメラで全身を撮影する本格的なモーションキャプチャ装置が徹夜を見抜く精度は最大83%。
事前の予想では、圧倒的に多くの情報を取れる研究室の装置が勝つはずでした。
ところがフタを開けてみれば、腰のセンサー1つがほぼ互角どころか、数字の上ではわずかに上回ってしまったのです。
研究チームによれば、睡眠不足による走りの変化をウェアラブル機器で検出できると示したのは今回が初めてです。
ただし、この高い的中率には「同じ人を比べた場合」という条件がありました。
人によって走り方はそもそも大きく違ううえ、徹夜したときのフォームの変わり方の大きさにも、かなりの個人差があったのです。
そのため、ある人の走行データ1本だけを見せて「これは徹夜明けの走りか?」とAIに尋ねた場合の正解率はほぼ50%、つまりあてずっぽうと同じレベルにまで落ちました。
人それぞれのフォームの違いは、睡眠不足がもたらす変化よりもはるかに大きく、寝不足のサインはフォームの個性の中に溶けてしまったのです。
しかし逆を言えば、「よく寝た日の自分の走り」さえ記録してあれば、腰のセンサー1つでその人の寝不足の走りを高い精度で見抜けるということです。
日頃から自分の走りを記録しておけば、朝のジョグひとつで「今日は体が寝不足モードです」と警告してくれる――そんなアプリやデバイスの登場も期待できるでしょう。
コーチが選手の隠れた睡眠問題やオーバーワークを、本人の自己申告に頼らず察知する道も開けるかもしれません。
それにしても、なぜ眠らなかっただけで走りが変わったのでしょうか?
































