実験でも「他人と違うことを言おう」とすると否定的な意見になった
Redditのデータだけからでは、「人と違うことを言いたい」という心理が本当にネガティブ化を引き起こしているのかまでは判断できません。
そこで研究チームは、3685人を対象とした大規模な実験を行いました。
参加者にはニュースの見出しと、それについて先に参加した人たちが書いたコメントを見せ、そこに自分のコメントを追加してもらいました。
このとき、実験は参加者を大きく2つの条件に分けました。
一方には、「これまでの人とはできるだけ異なる、独自のコメントを書いてください」と求め、最も独自性の高いコメントを書いた参加者には5ドルの報酬を設定しました。
もう一方には反対に、「観点が他の人に近いコメントを書いてください」と求め、最も類似性の高いコメントを書いた人に報酬を与えました。
実験では、この手続きを5つの連続したラウンドに分けて行いました。
最初のラウンドの参加者がコメントを書き、そのコメントの一部を次のラウンドの参加者が読み、それを踏まえて新たなコメントを書きます。
そのコメントがさらに次のラウンドへ渡されるという形で、オンライン上の会話が徐々に積み重なっていく状況を人工的に再現したのです。
結果は明確でした。
他の人とは違うコメントを書くよう促された条件では、ラウンドが進むにつれてコメントが否定的になる傾向が現れたのです。
しかも、この変化は最初のニュースがポジティブだった場合に最も強く見られました。
中立的なニュースでもネガティブ化は確認されましたが、もともとネガティブなニュースになるほどその傾向は弱まり、最もネガティブなニュースでは有意な変化は確認されませんでした。
一方、他の人と似たコメントを書くよう促された条件では、同じようなネガティブ化は起きませんでした。
むしろポジティブまたは中立的なニュースでは、ラウンドが進むにつれてコメントがよりポジティブになる傾向が確認されています。
この実験から、少なくとも「他人と差別化するよう促されること」自体が、コメントをネガティブな方向へ変化させる原因になり得ることが示されました。
SNSが荒れるのは「性格が悪い人が多いから」とは限らない
今回の研究で興味深いのは、「SNSでは人々が悪口を書きたがっているからネガティブになる」と説明しているわけではない点です。
むしろ研究から浮かび上がったのは、
悪口を書きたいわけではなくても、「他の人とは違うことを言いたい」と考えた結果、否定的な方向へ進んでしまうことがあるというのです。
また論文のタイトルが「ネガティブさの増加」ではなく、「ポジティブさの侵食(erosion of positivity)」となっているのも興味深い点です。
実際、Reddit上の会話の多くが、時間とともに完全なネガティブ領域まで落ち込んだわけではありません。
研究者らは、SNSの会話が最終的に悪意や攻撃で埋め尽くされるというより、最初にあった好意的な雰囲気が、会話が続くにつれて少しずつ薄れていく現象として捉えています。
もちろん、この研究はRedditだけを分析したものなので、SNSの特性として述べるには限界がありますが、それでも研究チームは、匿名性が高く、同じ話題について多くの人が順番にコメントするYouTubeやTikTokなどでは似た現象が起こる可能性を予測しています。
一方、Facebookのように実名性や人間関係による評判の影響が大きいSNSでは、同じ現象が弱くなる可能性もあります。
人とはちょっと違った事を言いたい、という欲求は自然なものであり、誰もが抱く心理です。しかしそのためやたらと批判めいたことを言ってしまっていないか、注意するようにしたいですね。
































