「あなたの家はどこ?」が気づかせた、自分が失っていたもの
もう1つ紹介されているのは、金融業界で成功していた女性の体験です。
彼女はアルコールやその他の物質の問題を抱えるパートナーから長年にわたり家庭内暴力を受け、その後も3年間に及ぶ別居生活を経験していました。
うつ病やPTSD、不安症と診断され、さまざまな薬も試していました。
そんなある晩、彼女は若い同僚を車で送ることになりました。
同僚がカーナビに自分の住所を入力しようとすると、画面の上部に「ホーム(Home)」という項目が表示されました。
それを見た同僚は何気なく尋ねます。
「家はどこなんですか?」
女性は、その質問を聞いた瞬間に固まってしまいました。
本当は「私には家なんてない」と答えたかったからです。
彼女は聞こえなかったふりをして同僚を送り届けましたが、その後車を停めて泣き出しました。
そして初めて、自分自身に同じ質問を投げかけました。
「私には家があるのだろうか?」
その夜、彼女は両親の家へ向かい、6カ月間の無給休暇を取ることを決めました。
セラピーを続け、10週間後には自分の家へ戻ります。
そして記事では、それが何年かぶりに彼女にとって本当の意味での「家」になったと描かれています。
同僚には、彼女の人生を変えようという意図などありませんでした。
ただカーナビを見ながら、何気ない世間話をしただけです。
しかし彼女にとって「家」という言葉は、単なる建物や住所を意味する言葉ではありませんでした。
安全な場所を失った経験そのものと深く結びついていたのです。
だからこそ、その短い質問が、長く見ないようにしてきた問題を一気に意識へ浮かび上がらせたのでしょう。


































