若者は障害物を越えるかなり前から足を高くしていた
若年者では、矩形とアーチ型による足の軌跡の違いが、足を振り出す動作の約30%が経過した時点から現れていました。
その差は障害物を越える直前まで続き、小型と大型のどちらでも確認されました。
さらに、この区間では矩形障害物をまたぐときの足が、アーチ型より平均約3.7cm高くなっていました。
つまり若者は、障害物の目の前で急に足を持ち上げたのではありません。
矩形障害物にある垂直面や「縁」への接触を避けるように、早い段階から足の軌道を高く調整していた可能性があります。
一方、高齢者では、足を振り出してから着地するまでの軌跡全体に、形状による統計学的に明瞭な違いは確認されませんでした。
ただし、これは「高齢者は障害物の形にまったく反応していない」という意味ではありません。
障害物を通過する瞬間の足と障害物との距離を個別に調べると、高齢者でも形状による有意な違いが確認されたからです。
つまり高齢者でも形状の影響がまったくなかったわけではなく、若者のように軌跡全体へ一貫した違いとして現れなかったのです。
その理由は今回の研究だけでは断定できません。
研究チームは、高齢者では形に合わせた軌跡調整が若者ほど明瞭ではなかった可能性に加え、調整方法の個人差が大きく、集団では一貫した差が出にくかった可能性も挙げています。
さらに同じ研究グループの過去の実験では、本人が気づかない程度に障害物を高くすると若者も高齢者も足を高くしましたが、低くした場合には若者だけが足を低く調整していました。
これらを合わせると、高齢者は危険性が増す変化には対応する一方、比較的危険性が低い状況では細かく軌道を変えず、一定の安全余裕を保っている可能性もあります。
とはいえ、今回の軌跡解析は若年者12名、高齢者13名と小規模で、実際につまずいた回数や転倒との関係を直接調べたものではありません。
今後は対象者を増やし、視線や障害物の認識、実際の接触やつまずきとの関係を調べる必要があります。
何気なく行っている「またぐ」という動作にも、障害物の形を読み取って足を調整する細かな仕組みが隠されているようです。































