尾はまだ古いのに、呼吸は現代式

一方で、この小さなワニには現生のワニが持っているものがいくつか欠けていました。
まず目につくのが尾です。
今のワニの尾には、鱗が高く盛り上がってひれのようになった構造があり、水中で体を推し進める役目を果たしています。
モンセコスクスの尾にその痕跡はありません。
四肢の鱗も、現生種のように強く隆起してはいませんでした。
全体として、ナイルワニよりもいくぶん滑らかなシルエットをしていたわけです。
泳ぎのための装備は、現生のワニほど整っていなかったのです。
ところが胸を紫外線で照らすと、まったく逆の光景が現れました。
青みがかって浮かび上がったのは軟骨です。
骨でできた肋骨の先に軟骨の中間部が続き、さらに胸側の軟骨につながる。
この骨と軟骨の三段構えが、はっきり残っていたのです。
この三段構えは現生のワニと同じ仕組みで、胸郭の容積を細かく調節できるため、呼吸の効率を高めます。
さらに前方の肋骨には、そこから突き出た小さな三角形の突起(鉤状突起)が並んでいました。
呼吸を助ける筋肉が付着する場所で、鳥類や恐竜、ワニの仲間に広く見られるものです。
呼吸を速く深く保てるほど体は活発に動けるため、この動物が現生のワニより体温を高めに維持できていた可能性も出てきます。
泳ぐための体はまだ現生ワニのものになっていないのに、息をするための仕組みだけは、すでに完成間近のところまで来ていたことになります。
この化石が石の中で過ごした1億2500万年に比べれば、博物館で眠った100年など、ほんの一瞬です。
その一瞬の終わりに当てられた紫外線が、ようやく尾の縞を照らし出しました。































