気体に圧力を与える根本、「原子1個の衝突」を検出することに成功
気体に圧力を与える根本、「原子1個の衝突」を検出することに成功 / Credit:Canva , 川勝康弘
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気体に圧力を与える根本、「原子1個の衝突」を検出することに成功 (2/2)

2026.09.12 18:00:02 Saturday

前ページ私たちが「圧力」と呼んでいるものは連打だ

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衝突を数えると、圧力になった

衝突を数えると、圧力になった
衝突を数えると、圧力になった / Credit:Canva , 川勝康弘

今回の研究では、直径100ナノメートルのガラス(シリカ)の球を、レーザーの焦点に閉じ込めました。

すると球は見えないバネにつながれたかのように、その場で毎秒およそ4万8000回のペースで前後に揺れ続けます。

水の中ではつままれた粒はその場で止まってしまいますが、抵抗のない真空では止まらず、揺れ続けます。

こうして「揺れるセンサー」部分が作られました。

補足解説:事前のデータ分析

今回の研究の成否はデータ処理にあります。研究者たちは光で球を浮かる仕組みに加えて、二種類の記録も事前に収集していました。ひとつは、球の居場所をひたすら追い続けた長い素の記録です。もうひとつは、強さの分かっている一撃を800回加えたときの、球の揺れ方の記録を作りました。そうして「叩かれた球の揺れは、こういう形になる」というデータを蓄積していきました。たとえるなら、同じ太鼓を決まった強さで800回叩いて、その響き方を先に録音しておいたようなものです。

準備が整ったところで、チームは真空の容器に、大気圧の1億分の1にも満たないというごくわずかな気体を送り込みました。

選んだのはクリプトンとキセノンという重い原子、それに六フッ化硫黄という重い分子です。

同じ温度なら重いものほど1回の蹴りの勢いが大きく、見つけやすいからです。

すると規則正しい揺れに一瞬の「乱れ」が次々と記録されていきました。

そして気体を入れたあとの揺れを手本と照らし合わせ、一撃の時刻と勢いを1発ずつ読み取り、気体を入れていないときの記録と見比べました。

こうして拾い上げられた一撃は、運動量の単位にして200〜600keV/cという小ささでした。

たとえばキセノン原子1個の衝突とみられる信号は、およそ390keV/cの一撃として波形に残っています。

また、1秒あたりの発数と一撃ずつの強さを、球の大きさや気体の温度とあわせて計算すれば、注ぎ込んだ気体が生む圧力が割り出せます。

そこで圧力を変えながら1秒当たりの命中数と比較してみました。

すると、衝突から逆算した圧力は、真空計から求めたその気体の圧力とほぼ一致することが確かめられました。

(※注入した気体が生み出す圧力は、大気圧のおよそ5000億分の1まで見分けられると見積もられました)

この「衝突そのものを物差しにする」という点に、圧力計としての値打ちがあります。

ふつうの圧力計は、自分の目盛りが正しいかどうかを自分では確かめられず、別の圧力計を基準にして合わせてもらいます。

その基準もまた別の基準に合わせてもらっているので、たどっていけば、どこかに大元がなければなりません。

けれども衝突を1個ずつ数える方式なら、ほかの圧力計の目盛りを借りず、自分で測れる量と物理法則だけで圧力にたどり着けます。

論文は今回の結果を、きわめて高い真空での新しい圧力の基準(一次標準)につながる原理実証だと位置づけています。

そして本成果は、圧力を測る新しい方法を示しただけにとどまりません。

分子レベルの衝突の瞬間を検知する技術は、まだ見つかっていない種類のニュートリノ(不活性ニュートリノ)などの探索にも期待されています。

肌を押してくるあのぼんやりした重みの正体が、1発、また1発と数えられる粒の連なりとして、いま測られはじめています。

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