なぜトマトで注意力や記憶力が上がるのか?

研究チームが仕組みの候補として注目するのが、リコピンの抗酸化作用です。
リコピンは、血液から脳へ入る物質を選別する関門を通過できる成分です。
先行研究では、リコピンが脳の酸化ストレスや炎症を抑える可能性が示されています。
いわば、神経細胞が働きやすい環境づくりに関わるのではないか、という考え方です。
今回も、トマトを食べた期間には血液中のリコピンが増えました。
両方の食事期間のデータを合わせると、リコピンの増加が大きいほど、集中力や処理の速さの改善も大きい傾向がありました。
食べた成分が脳の環境に関わるとして、情報処理の仕方にはどんな変化が起きるのでしょうか。
その手がかりを探すため、研究チームは14人の協力を得て、脳の働きを画像化する「fMRI」という検査を行いました。
この解析で注目したのは脳の形ではなく、離れた領域の活動がどの程度一緒に変動するかという「連動」です。
するとトマトを食べた後には、注意を調整するネットワークや音の処理に関わるネットワークで、一部の領域との連動が弱まる兆しがみられました。
一見すると、つながりが弱まるとかえって働きが悪くなりそうにも思えます。
しかし研究チームは、必要のないやり取りを減らすことで、目の前の課題に集中しやすくなった可能性を挙げています。
会議でも、全員が一斉に話すより、必要な発言が通るほうが話を追いやすい、というイメージです。
もっとも脳画像の解析は少人数でのみ行われた結果であり、脳の効率化が起きたと断言できるまでには至っていません。
また、トマトにはリコピン以外の成分も含まれるため、今回の変化を赤い色素だけの手柄にはできません。
それでも身近なトマトペーストを食べることで注意力や一部の記憶課題の成績に改善がみられたことは重要な結果です。
これまでの臨床試験では、トマトをほかの食品や成分と組み合わせて調べることが多く、トマトそのものがどこまで役立つのかは見えにくいままでした。
研究チームは今後、より多くの人を長期間調べ、今回の改善が持続するのか、さらに年齢とともに進む認知機能の低下を防ぐことにつながるのかを調べるべき課題として挙げています。






















