細菌は線虫の体の中で何を止めていたのか?

手がかりになったのは、線虫の体の中の「鉄」と「脂」でした。
AMB-1を食べた線虫では、OP50を食べた線虫と比べて、鉄(2価の鉄イオン、Fe²⁺)の量が34.11%減っていました。
過酸化脂質(酸化して傷んだ脂)も、52.19%減っていました。
鉄がたまることと、細胞の中の脂が酸化で傷むこと。
この2つと結びついた細胞の死に方が、フェロトーシスです。
線虫では、年を取るにつれてフェロトーシスが起きます。
AMB-1は、この老化にともなうフェロトーシスをはっきりと抑えていました。
遺伝子の働きにも、変化が出ていました。
AMB-1は、フェリチン(鉄をため込むたんぱく質)の設計図になる遺伝子「ftn-1」の働きを強めました。
反対に、「bli-3」という遺伝子の働きを弱めました。
bli-3は、線虫が持つただ1つのNADPHオキシダーゼ(NOX、活性酸素をつくる酵素)の仲間で、フェロトーシスを後押しする役を持つ遺伝子です。
つまり細菌は、細胞の死を後押しする側の遺伝子にブレーキをかけていたことになります。
こうした変化によって、フェロトーシスにかかわる指標が抑えられていました。
さらに研究チームは、RNA干渉(RNAi、特定の遺伝子の働きを弱める手法)を使って遺伝子を調べる実験も行いました。
その結果、フェロトーシスにかかわる遺伝子「ads-1」が、AMB-1による長生きに重要な役割を果たしていることが分かりました。
ads-1は、AGPSという酵素の設計図になる遺伝子です。
研究チームは、AMB-1がフェロトーシスを抑えることで、線虫が健康に年を取るのを助けたと結論づけています。
研究チームはさらに、今回の結果が微生物を使った新しい老化対策の道を示し、高齢者の医療で走磁性細菌を広く使うための土台になりうるとも述べています。
一方で、マグネトソームを作る力が、どんな道すじで鉄を減らし、フェロトーシスを抑えることにつながるのかは、今回の発表では語られていません。

























