正確すぎる時計は「重力」まで感じ取る

ここまで正確になると、時計は思わぬものまで感じ取るようになります。
それが重力です。
重力は時間の進みを遅らせるため、高さの違う場所に置いた時計は、わずかに違うペースで時を刻みます。
10⁻¹⁹のレベルで動く光原子時計なら、わずか数ミリメートルの高さの違いが生むこの効果まで捉えられます。
実際、今回の比較は、同じテーブルに置いた2台の時計の5ミリメートルの高さの違いを見分けられるほどの感度を持っていました。
そのため研究チームは、高さの違いが比較の足を引っ張らないよう、2つのイオンの高さの差を1ミリメートル未満の精度で別に測っていました。
一方で、この敏感さは、世界のほかの一流の原子時計と比べるときの壁にもなります。
以前ナゾロジーではこういう記事も紹介しています(原子時計を加速させることで、現実世界の時間の遅れを観測することに成功)
地球上の場所ごとの重力の違いがまだ十分に分かっていないため、このレベルの正確さでは、時計の性能の差と重力の影響を切り分けられないのです。
それでもこの敏感さは、研究室の外で役に立つかもしれません。
時計を使ってミリメートル単位で高さを測ったり、地球各地の重力の変化を見守ったりする使い方が期待されているのです。
また、国際的な時刻の管理の改善につながるほか、2030年かそれ以降に見込まれる「秒の再定義」の議論でも、こうした時計の測定が検討されています。
さらに、一般相対性理論やローレンツ不変性(どんな速さで動く観測者から見ても物理法則が同じであるという性質)の検証、暗黒物質の探索、基礎物理定数(自然の法則に現れる決まった値)が変化していないかの確認など、物理学の根本的な問いに迫る道具としても期待されています。
共同筆頭著者で博士課程の学生のマイケル・リー氏は「次のステップは、研究室サイズの時計を小さくして、持ち運べるシステムにすることです」と話します。
研究チームは、正確さを損なわずに時計を小さくできると見込んでいます。
時計は、時刻を知らせるためだけの道具ではなくなりつつあります。
足元の重力のわずかな違いまで映し出す、地球を測る「ものさし」にもなろうとしているのかもしれません。



















