勝負に強い少数派が、それでも増えない理由

勝負に強いのに、なぜ増えないのでしょうか。
「サウスポーは手ごわい」の説に立てば、左利きは増えないのではなく、増えられないのです。
強みの正体が、「珍しさ」そのものだからです。
仮に左利きが半分を占めれば、誰にとっても対戦相手の半分は左利きになり、意表を突く効果は残りません。
スーパーで空いている端のレジに回ると、早く会計が済みます。
けれども、それに気づいた人から移っていけば、今度はそちらが長い列になります。
左利きの強みも同じで、同じ側に立つ人が増えるほど目減りしていくのです。
しかも多数派には、多数派ならではの得があります。
同じ側の手を使う者どうしなら、道具をそのまま貸し借りでき、並んで作業しても肘がぶつかりません。
競い合う場面では少数派が得をし、力を合わせる場面では多数派が得をする。
左利きが消えても、右と左が半々になっても、この釣り合いは崩れます。
だから左利きは、一掃されることも、多数派に成り上がることもなく、少ない側で止まったままなのです。
進化の分野では、こうした釣り合いを「進化的に安定な戦略(ESS)」と呼びます。
研究チームは、今回の結果が、少数派が勝負で得をするという考え方に沿うものだと述べています。
この考え方は、これまで主にスポーツや格闘の勝敗記録から語られてきました。
それが予言していた心の傾きが、1000人を超える人々の競争への向き合い方の中から見つかったことになります。
では、左利きの勝ちたい気持ちは、どこから来るのでしょうか。
研究チームは、2つの可能性を挙げています。
1つ目は、体の中の仕組みです。
攻撃的なふるまいと関係があるとされる男性ホルモン(テストステロン)について、過去には男子大学生64人の唾液を調べ、左利きのほうが平均濃度が高かったという報告があります。
今回見つかった競争心の差の裏にも、このホルモンが隠れているのかもしれません。
2つ目は、少数派として暮らす経験そのものです。
ハサミや自動改札のように、身の回りには右利きに合わせて作られたものがあふれています。
研究チームは、少数派であることがもどかしさ(フラストレーション)を生み、それが勝負への意欲を押し上げている可能性も否定できないとしています。
今回の調査では、ホルモンももどかしさも測っていないため、2つの可能性はまだ切り分けられていません。
それでも、利き手と結びついていたのは性格でも気分でもなく、競争への構えだったという切り分けは、はっきりつきました。
研究チームは、今後の研究では少数派として暮らすもどかしさの強さも測り、男女と利き手の人数をそろえて確かめるべきだとしています。
左利きの勝ち気は、生まれついての資質のように聞こえます。
けれども2つ目の可能性が当たっているなら、その気の強さを育てたのは血ばかりではなく、ハサミと改札でもあったことになります。
使いにくさを押しつけてきた道具の向きが、同じ人に、引き下がらない構えを渡していた。
1割の少数派が見せる勝ち気は、手の珍しさだけでなく、その珍しさと毎日つき合ってきた時間のほうにも刻まれているのかもしれません。






















