長く宇宙にいた飛行士で増えていた「ある骨折」

分析の結果、90日を超える長い宇宙飛行のあとの期間では、股関節(脚の付け根の関節)の骨折が起こる割合が高くなっていました。
これは、長い飛行をしていない期間とくらべても、宇宙飛行をしていない期間とくらべても同じでした。
どちらの比較でも、長い飛行のあとの方が骨折の割合が高い確率は99%を超えていました。
差の確かさを示す「ベイズ因子」という数値は、3を超えれば意味のある差とされますが、今回は140と832に達しています。
一方で、股関節以外の骨では、長い飛行のあとでも骨折の割合は同じくらいでした。
目立って増えていたのは、股関節の骨折だったのです。
さらに注目したいのは、骨折が起きた年齢です。
長い飛行のあとの期間にあたる飛行士たちは平均62.5歳でしたが、股関節の骨折の割合は、宇宙飛行士ではない70〜79歳の人たちと同じくらいでした。
骨折の割合で見ると、宇宙に長くいた飛行士は、8〜16.5歳ほど年上の人たちと肩を並べていたことになります。
宇宙飛行士では、一般の人より早い年齢で股関節の骨折の割合が高くなる。研究チームは、このことを報告したのは今回が初めてだとしています。
ただし今回示されたのは長い飛行と股関節の骨折の結びつきで、宇宙飛行が骨折を引き起こしたと確かめたわけではありません。
それでも、解説記事のもう1人の著者はこう述べています。予想より早い年齢で股関節の骨折が起きたことは、宇宙で減った骨が、長い目で見ると本当の骨折につながりうることを示す臨床的な証拠(実際の人の体で確かめられた証拠)だというのです。
シボンガ博士は、いまの骨の検査をもっと広げる必要があると訴えています。
これまでは主に、X線を使って骨密度(骨にミネラルがどれだけ詰まっているか)を測る検査が行われてきました。
NASAは最近、宇宙飛行の前と後に、骨をよりくわしく調べられるCT検査も始めました。
この検査では、骨の部分ごとの様子や、飛行士の骨が完全に元に戻ったかどうかについて、より詳しい情報が得られる可能性があります。
それが分からないままでは、まだ飛行前の状態に戻っていない骨に、飛行士が負担をかけすぎてしまうおそれがあるのです。
研究チームは、飛行前の骨の健康を保つための予防策も必要だとしています。
元気そうに地球へ戻ってきた飛行士の骨にも、目に見えない宇宙の名残が長く残っているのかもしれません。
以前ナゾロジーではこういう記事も紹介しています(「爪が剥がれる!?」意外と知られていない宇宙飛行士に最も多い怪我の理由)
人が宇宙で長く過ごす時代には、「無事に帰ってくること」と同じくらい、「帰ってから何年も元気でいること」が大切になりそうです。























