・地球の中心核である内核は、モデル上固体であるとされていたが、証拠となるデータはなかった
・地震波の内、内核に到達する特有の振動をJフェーズというが、検出は不可能であり理論上の存在とされていた
・地震後数時間の微小な振動データ2箇所の比較を多量に行い、類似性を見つけることでJフェーズを検出
地質学者たちが、地球の中心に鎮座する「内核」がついに「固体」であるという証拠を得ました。
研究はオーストラリア国立大学(ANU)によって行われ、10月19日に“Science”で発表されています。
http://science.sciencemag.org/content/362/6412/329
科学技術や測定技術が発達し、彼方から来る重力波さえ捕らえられる現代。しかし私たちの足元に実際何があるのかについては、はっきりとした証拠は得られていませんでした。
地球の中心までは約6,000kmありますが、ドリルで掘り進んで到達できたのはたった12kmです。では、研究者たちはどうやって地球の内部のことを知ればいいのでしょうか。
その鍵となるのが、地震波です。
振動は、物質の状態によって伝わり方が変わります。大きな地震が起こった際、地震の振動は地殻を通して広がりますが、地球の内部を通過して伝わる波もあります。そのため、内部を通過する波を検出すれば地球内部の様子を詳しく知ることができるのです。しかし惑星の内核まで達する振動は微かで、検出は困難を極めます。
惑星内核を通過すると考えられる特有の振動は、Jフェーズと呼ばれています。これまではその検出難易度から理論上の説とされ、地震学の「聖杯」として扱われていました。
今回の研究でANUの研究者たちは、地震波の中のこの微かなJフェーズを検出を可能にする方法を思いつきました。それは、強い地震が起こった際に、その強い地震波が通過した後の数時間に渡る振動データを2箇所の測定ポイントで比較するというものです。
地球内部を通過する振動は到達に時間がかかるため、長時間のデータの中にJフェーズは潜んでいるはずです。そして比較を行ったデータが十分にそろうと、あるパターンが現れてきます。
この比較に見られる類似性パターンを、相互相関と言います。世界中に散らばる震度計のデータと複数の大地震から、膨大な比較ペアが得られたことで、十分な相互相関データが揃いました。
今までモデルで示されていたのは、内核は鉄とニッケルからできており、月の4分の3程度の大きさで、太陽の表面ほどの温度があり、鉄の結晶の並び方の違いによっては内核のさらに内側に核の核があるといった複雑な構造を持つ可能性があるということです。
こういったモデルに対して、今回の研究はその証拠を示しました。さらに、測定が正しいとすれば、内核の硬さは想定よりも柔らかく、金やプラチナのような柔軟性を持っているとのこと。
こういった情報は、惑星の形成や磁場形成の仕組みについて詳しく知る助けとなるでしょう。例えば、どのようにポールシフトが起こるかといった謎を解明する手助けとなるかもしれません。
検出不可能と思われていたJフェーズですが、今回の方法を使えばさらにデータを集めることができそうです。しかし、いわゆる地球の内部が空洞だとする地球空洞説は今回の発見で死んでしまったようです。ただし地球の中心は、到達不可能な場所の一つ。もし実際に行くことがあれば、さらなる未知が私たちを待っている可能性もあるでしょう。
via: Science Alert/ translated & text by SENPAI