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キューバの米大使館職員を狙った「音響兵器」の正体は「コオロギ」だった? それでも残る謎とは

2019.01.09 Wednesday

Credit: EPA
Point
■2016~2017年にかけて、キューバの米国大使館の職員が「奇妙な騒音」を聞いた後に相次いで体調不良を訴えるといった事件が発生した
■当初キューバの「音響兵器」によるものと考えられていたが、新たな研究によりその音が「コオロギの鳴き声」と一致していたことが判明した

2016~2017年にかけて、キューバの米国大使館に勤務する職員の多くが、滞在先のホテルや自宅において「奇妙な騒音」を聞いた後に体調不良を訴えるといった事件が起こりました。

その症状は様々ですが、めまい、頭痛、耳の痛み、さらには認知機能の低下や難聴を患った職員までもいました。

そして研究者らが大使館職員からその音を入手して分析した結果、驚くべきことにその音響信号が「昆虫の鳴き声」と酷似していることが発覚。さらに調査を進めた結果、その音が「Indies short-tailed cricket」と呼ばれるコオロギの鳴き声であることが判明しました。

Recording of “sonic attacks” on U.S. diplomats in Cuba spectrally matches the echoing call of a Caribbean cricket
https://www.biorxiv.org/content/early/2019/01/04/510834

■コオロギの鳴き声を室内で反響させると…

この事件により、医療措置を受けるためにアメリカへの帰国を余儀なくされた職員も。米国当局はこの攻撃が「音響兵器」によるものであると主張しており、その報復としてキューバの外交官がアメリカから追放されています。

研究によれば、音の継続時間、パルスが繰り返される間隔などが、コオロギの鳴き声に驚くほど似ていたとのこと。中には微妙な違いもありましたが、それは録音された音が「室内」といった音が跳ね返る環境において録音されたものであったことが考えられます。

そしてこの仮説を検証するために、研究者らが野生のコオロギの鳴き声を録音したものを室内で反響させてみた結果、その音のパルス構造がキューバにおいて大使館職員を苦しめた音と一致していたことが分かりました。

次ページ■なぜ「大使館職員」だけが被害に?

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