時間の罠?子育てと長時間労働の不都合な真実

中国ではかつて“一人っ子政策”を長年にわたって維持していましたが、近年は二人、さらに三人の子どもまで認める施策へと大きく舵を切りました。
しかし、それでも出生率の下落は止まらず、人口構造の歪みや高齢化という問題が深刻化しています。多くの人は「住宅費や教育費が高すぎる」「子育て支援が不足している」といった経済的・制度的な要因をまず思い浮かべるかもしれませんが、最近とくに注目され始めているのが「時間的余裕の欠如」です。
長時間労働が家族形成の意欲を損ねているという指摘が、社会のさまざまな場所で聞かれるようになってきました。
たとえば中国都市部でしばしば耳にする「996」という働き方は、朝9時から夜9時まで働き、それを週6日続けるというもので、まるで終わりの見えないマラソンのようです。
日本でも長時間労働が深刻な問題として取り上げられていますが、中国の労働文化も相当ハードで、“余暇はおろか睡眠すら削るのが当たり前”とも揶揄されるほど。
こうした時間的プレッシャーは家庭生活に予想以上の負担をかけるという研究報告は、日本やアメリカ、ヨーロッパなど世界各地からも上がっています。
しかし、中国ほど地域差が大きく、かつ大規模に検証した例はこれまであまりありませんでした。
また、中国の若い世代からは「経済的には豊かになったけれど、心と時間の余裕がない」という声が聞こえます。
キャリアアップのために必死に働きつづけるうちに、いざ子どもを育てようと思ったときに果たして体力や精神的余裕が残るのだろうかという不安が膨らむ──これはある意味、“砂漠を歩き続けるような労働環境で、家族というオアシスを探す”かのようです。
こうした疑問を解き明かすために、中国全土を対象とした大規模調査のデータを用いて、長時間労働と子どもを持つ意欲の関係に切り込んだのが今回の研究です。